【自己顕示録】


2000年8月


8/7

/Juvenile/

(see also http://www.juvenile.net/

*なれそめ*

6月ごろ、新宿にて本映画の看板を見て、かっこいいなと感じていた。ジュブナイルという単語も綺麗だ。また、そのころ掛かっていた山下達郎の新曲「juvenile−瞳のなかのrainbow−」も好きで、イメージとしてはとても美しかった。

余談:ちなみに、この単語は去年覚えたばかり^-^ 筒井康隆が「わたしのグランパ」を書いたときに、書評で「久々にjuvenile(少年少女小説)に挑戦した筒井氏」というくだりがあり、学んだ。耳で覚えたので、「ジュナイル」のほうが しっくり来る。)

この映画を、友人にして先人たるTOY1氏が大プッシュしていた。最近まれに見る傑作のSFものジュビナイルだという。また、例の山下達郎氏の曲は、この映画の主題歌になっていた。

今日時間が空いたので、映画館の前に行った、次回の上映をチェック。

次回 4:30より上映   ただいま座れます

時計を見ると、いまは4:20。運命が僕に「観なさい」といっているに違いない。

*あらすじ*

最初の10分ほどを除き、ずっと心奪われていました。これはいい映画です。甘酸っぱくて、ドキドキできて、ワクワクできて、感動できる映画。もちろん子供向けなんだけど、ぼくは十分すぎるほど冒険を堪能しました。2度泣きました^-^ あいかわらず涙もろい。

*プロローグ*

少年達は、キャンプ場で一筋の光を見る。その落ちた先にあったのは、ボール状のロボット、テトラ。−−テトラはなぜかユウスケ(だっけ? 主人公の名前? 忘れちゃった)のことを知っていた。

テトラは、ユウスケたちに見守られつつ、自分のボディーを更に作り上げていく。「ここから先の作業にはInternetが必要」とテトラがいう。だが少年達はPCを盛っていないため、途方に暮れる。

そんなとき、彼らは超サイエンティストの神崎(香取慎吾)に出会う。噂では変人とのことだったが、実際の彼は魅力たっぷりの青年。神崎はタイムマシンの研究をしており、嬉々としながら少年らに物体の瞬間移動(人工微少ブラックホール−ホワイトホール)を実演してみせる。

その実験が生み出したホワイトホールの出現場所は、偶然にもテトラを発見した場所と同じであった。ひょっとしたら、神崎はテトラのことを知っているかもしれない。少年達は、テトラのことを打ち明ける。

(ここからが 本当の冒険になる)

*潜伏員*

同時に、異星の住民が地球を狙って宇宙から攻め寄ってきていた。ひとりの調査員が、人間に化けて潜り込む。はじめは、ヒロインである岬ちゃん(鈴木杏)のお姉さん(酒井美紀)に化けた。

この「酒井美紀」も実は科学者の卵で、偶然神崎と知り合いだった。時空移動の研究をする神崎と意気投合し、彼女のほんの一言が神崎のあらたな閃きを誘う。−−神崎は己の思想に夢中になっており、その場でチョークを取り、壁に数式を書きまくる。こうなると誰の言葉も耳に入らなくなる。

その直後、潜伏員は酒井美紀本人を確保し、「始末」する。その後、神崎の家にも潜り込み、同様に神崎を「始末」してしまう。

(−−神崎が始末されたとき、映画はちょうど半分を経過していた。ひょっとして、この映画から「頼りになる大人」は消えてしまうのか? と思い、かなり悲しくなった。)

*テトラ消失*

この夜、テトラはPlayStation2を操り、ユウスケにあるゲームをやらせる。リアルなロボット操作ゲーム。ユウスケが疲れて寝た後、テトラはどこかに消えてしまう。

テトラ消失を悟った少年たちは、神崎の家を訪ねる。しかし、神崎は潜伏員に乗っ取られたニセモノだった。脇には、繭に包まれたホンモノの神崎が。あわや全滅かと思ったが、岬ちゃんの機転で、手近に合った液体窒素で潜伏員を凍らせる。泣きながらも「かたきは取ったから」と切れ切れに続ける岬ちゃん。

(−−このシーンで、「うわー、杏ちゃんてカッコイイ」と思った。)

だが、神崎は生きていた。たんに繭に閉じ込められただけだった。少年達は安堵し、神崎に現状を話す。状況を総合すると、どうも潜伏員はテトラをジャマに感じているようだ。「時空にそぐわない科学の産物は、計画を妨げる」?

(−−生きていた! このシーンで、僕も安堵し、少々涙を流した。少年達は、まだ放り出されたわけではないんだ。)

少年のひとりが、凍っている潜伏員のポケットから、ピラミッド状の装置を取り出す。誤ってスイッチを入れてしまい、まるで爆弾のように動作するので焦ったが、どうも爆弾ではなく、水分を吸収する謎の装置のようだ。−−少年達は爆発しなかったので大喜びだが、神崎はこの機能に恐怖を覚える。

その夜、とあるロボット工学の研究所に、テトラが現れた。寝ぼけていた職員は、これを『自分の幸せな夢』だと思い込み、研究所にある資材をテトラの自由にする。テトラは更なる部品を集めるため、ここに来たようだ。

翌日、海上に現れた謎のピラピッド型蜃気楼がニュースとして報道された。もちろん、かの装置の大きなものだ。神崎の計算によれば、これは地球の海をすべて抜き取るのに十分な量。ヤツら(宇宙人?)は、自分達の移植のために、地球の海の資源を使うつもりなのだろう。これを防ぐために、神崎は必死の計算を始めるとともに、少年達に依頼する。

テトラが鍵だ。ヤツラはテトラに脅えていた。君たちは、なんとかしてテトラを探してきてくれ

少年達は走る。はじめて出会った山を。自分たちが一度でも通った道を。屑鉄屋を。ローソンを。駄菓子屋を。ビラを撒き、聞き込みをし… でもテトラの消息は見つからない。−−テトラ、どうして答えてくれないんだい?

(−−このシーン、かなり意図的にstand by meだ。)

*岬ちゃんを助けなきゃ*

悲しみとともに神崎の家に戻ると、なんと神崎は潜伏員と酒を酌み交わしているではないか! 「話を聞き出すために酒を飲ませてみたら、これがまたいいヤツで…」

しかし、少年達が戻った後、潜伏員はふたたび戦意をむき出しにした。神崎を気絶させたのちに岬ちゃんを人質に取り、テトラを渡すように指示。しかし、テトラはいないのだ。−−潜伏員は、「9時までに探してこい」と言い残し、現場を去る。

慌てる少年達。ちょうどそのとき、神崎の家に電話が。テトラからだ。

「あたらしい体 完成した すぐ行く」

窓の外には、まえにテトラがPS2上に作り出してみせたゲームでのロボットが。これを操縦できるのはユウスケしかいない

「岬は 僕が 助け出す!」

岬ちゃんのPHSから割り出した位置情報から(おいおい、割り出すなよ^ー^)、ユウスケは現場へ向かう。残った少年はMTBで、神崎は「酒井美紀」を救出後、車で。

いくつかの交戦後、ユウスケは、潜伏員が操る偵察艇に乗り込む。例のピラピッドの装置を用いて「これを逆流させるぞ」と脅すが、すばやさの面で潜伏員のほうが上。あっさり屈服させられてしまう。

「まったく、危険なことをしやがって。この装置は母艦に転送しておく。」

だが、このときすでに、岬によって装置のスイッチは入れられていた。潜伏員は気付いていない。転送先の母艦にて原子の逆流が起こり、母艦の「海吸い上げ装置」は大破してしまった。

(−−この「あっけなさ」はマーズアタック級だ。)

偵察艇は、岬とユウスケを載せたまま母船に戻ろうとした。しかし、テトラの助けもあり、なんとか2人は脱出。少年たち・神崎・酒井美紀は再開し、互いの無事を喜ぶ。

だが、潜伏員は収まらない。空からユウスケに狙いを定め、ビームを発射した。

「おまえだけは 許せない」

これを察知したテトラは、みずからを盾にしてユウスケを守る。一瞬の閃光が振ってきたかと思えば、次の瞬間にテトラは打ち抜かれていた。

「ユウスケ、ユウスケ、だ、ぶ…」

直せないかと神崎に詰め寄るユウスケ。

「だめだ。テトラは現代のものじゃない技術で作られている。僕が手を入れたところで、違うテトラになってしまう。」

泣き崩れるユウスケ。それを岬ちゃんが泣きながら叱咤する。

「なによ! 泣いてばっかりいたって、テトラは戻らないわ。悔しかったら、ユウスケが直せばいいじゃない。これから勉強して、ロボットのこと覚えて、テトラを直してみせてよ!」

(−−おお、有志による「ドラえもん」逸話だ。いわいる「故障したドラえもんを直すために、のびた君がロボット工学を目指す」っすね。)

*テトラを作ろう*

時は流れ、ユウスケはもう大人。ロボット工学はロボット工学だが、すこし畑違いの「宇宙作業用ロボット」で大きな成果を上げていた。すでにテトラのことは「自分の専門外」だと考えており、いつか別の誰かが開発してくれるものと待つようになっていた。

そんなある日、妻になった岬とともに新聞を見ながら食事を取っていると、そこにはテトラに使われていたのと同じメモリー媒体が発表されていた。

(−−この「新聞」は、電子紙メディアに小さな機器によって情報が配信される。いまIBMが研究している電子インクの行きつく先だ。紙の薄さ、折り畳み製などがキープされていて、解像度は1200dpi以上。かつ反射光で見る(直接光だと目が疲れちゃうのだ)。ああ、電子紙、はやく実用化しないかな^-^)

ユウスケ「これだ! ついにテトラのメインメモリーの仕様が製品化されたよ。きっともうすぐ、テトラ自体も開発されるんだ」

岬「ああ、待ち遠しいわね。でも、本当は私は、あなたがテトラを作るんだと思ってたんだけどね」

ユウスケ「うーん、そうだねえ。たしかに、そうじゃないと、なんでテトラが最初に僕を知っていたのか、いまいち説明つかないもんね。

そこに神崎さんの研究所から電話が。時空間転移装置の実用化にメドが付きそうだ、とのこと。神崎さんからユウスケに、緊急の依頼が下る。

「6ヶ月以内に、テトラを開発してくれ」

直前の岬との会話で うすうす「そうなるに違いない」と、己の運命を久々に感じていたところだ。ユウスケは、照れ笑いをしながら開発を受諾する。−−開発シーンは描かれないが、なんとか期間までにテトラは完了した。

*また 会えたね*

神崎研究所にて、新しいテトラが、かつての少年たちの元に送られる。

その操作の脇で、ひさびさに終結した少年達の見守るなか、ユウスケは、修理した旧テトラに、保存しておいたメインメモリーをさし込む。1分ほど待つが、動かない。ダメなのか…と諦め掛けたところに、かすかな駆動音が聞こえてきた。

「ユウスケ、ユウスケ、大丈夫だったか?」

(−−数十年ぶりに動いた友人の言葉は、自分を気遣う言葉だった。僕はこのシーンで泣いた。泣くべくして作られたシーンだが、気持ちよく泣いた。なんと嬉しいことだろう。)

「テトラ! 僕のことが分かるかい?」

「ユウスケ。また おおきなユウスケに会えたね。」

「あれからね、もう何十年も経ったんだよ。君は、すごく久しぶりに起きたんだよ…」

涙でうまく話せないユウスケの手を、岬が取る。新テトラの過去への転送が始まるのだ。ここから、物語の全てが始まる。

(セリフ版を0009juvenile.txtとして作成したが、一部書いたのみで止まっている。)

*感想*

(映画の公開が終わったので、「ネタバラシ」感想もオープンにします。)

ストーリーも映像も、とくに新境地ではない。でも、こんなに気持ちよい「まとめ」があるのは幸せだ。

*エンディングについて*

実は僕は、2020年になった以降、ずっと「ここで終わりか? だとしたら、すごくいい終わりかただ」と感じながら観てました。「ユウスケが実際には宇宙ロボットに進んだためにテトラを作っていない」シーンで終わっても、テトラのメディアが発表されたシーンで終わっても、神崎さんから電話が来たシーンで終わっても、僕は満足した。「あとは想像にお任せします」で僕は満足できた。

にもかかわらず、映画はさらに進み、きちんとした結末をつけた。話はループした。テトラは生まれた。友情は確認できた。自分のケツを自分で持った。

ここまでやったら、たいていはどこか1つくらいは「気に入らない、ちょっと趣味と違う」部分が出てくるのが普通だった(私は偏屈だから)。でも、juvenileでは 綺麗にまとまっていて、すこしも感動をスポイルしなかった。というか、すすめば進むだけ感動した。こういうふうに結末を迎えられたのは、初めてかもしれない。

イイトコドリとは、このことか。





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