【音楽雑記】


2001年12月

12/23

/wieland kuijken + leonhardt[3 sonatas for viola da gamba and cembalo](J.S.Bach)/

1974年録音、DHMレーベル。国内版はBMG配給で1600円!

クイケン兄弟の次男ウィーランドによるヴィオラ=ダ=ガンバ(以下ガンバ)のソナタ集。レオンハルトのチェンバロとともに磐石の態勢。

Bachらしいトリオ(以上)ソナタで、厳密なフーガ曲以外でも、フレーズを模倣・交換しつつ刺激的に楽曲が展開する。同じフレーズであっても、(1)ガンバの中低音による甘い響きと、(2)チェンバロの低音による尖った重さ(といってもチェンバロは相対的に軽いが)、(3)チェンバロ高音による抜けるきらびやかさ では、それぞれ主張する内容が異なる。主旋律が違えば補佐演奏も当然組み変わってゆく。この展開の妙を十二分に味わえる。

曲も演奏も録音も素晴らしい。あまりに心酔してしまうので、どの曲がどうとは評価できない(その実力が無い)。あえて言えば、1番(BWV1027)全体、2番(BWV1028)の#2、3番(BWV1029)の#3が好きだ。

安いので、多くの人に聞いて欲しい。[音楽の捧げもの]と合わせてmust getです。

(余談:いまなんとなく、マストゲットという言い回しを使った。よくFM局で聞くのだが、spellにしてみて違和感たっぷり。これ、英語として通じるのか??)

/barthold kuijken[7 sonatas for flauto traverso](J.S.Bach)/

1988年録音、DHMレーベル、2枚組み。

クイケン兄弟の末弟バルトルドによるフラウト=トラベルゾ(以下フラウト)のソナタ集。独奏あり、+チェンバロあり、2つのフラウト+チェンバロあり、+チェンバロ+通奏低音あり。+バイオリン+通奏低音あり。チェンバロはleonhard、ガンバはwieland、バイオリンはsigiswald。

個人的にはちと弱い。フラウトは音が甘すぎて演奏がボケる気がする。BWV1039はガンバのソナタの1番(BWV1039)と同じ楽曲で、かつフラウトがオリジナルであるにもかかわらず、私は魅力を感じない。どうしてもフレーズに聞き応えを感じないのだ。−−耳がロックに慣れているせいかな。でもバイオリンやガンバには惚れるから、違うな。

とくに無伴奏(独奏)には納得できない。解説ではフラウト独奏でも2声3声をこなしているとあるが、私はそれを感じない。やはり音域やフレーズに限界が多すぎる。ヴァイオリンの無伴奏のような奇跡は感じ取れない。

合奏するにせよ、チェンバロとフラウトでは音域が近すぎる。低音担当がいないので絞まらない。ガンバやバイオリンがあると聞けるが、ならばフラウト主役のこのディスクを選んだ意味が無い。−−なお、このディスクでのsigのバイオリンは、変に尖った痛い音になっている。悲しい。

買ったことを損だとは思わない。しかし、持っていなくとも悔しくない。

/sigiswald kuijken + leonhard[6 sonatas for violin and cembalo](J.S.Bach)/

1973年録音、DHMレーベル、2枚組み。国内版はBMG配給で3200円。

チェンバロの細かい演奏の粒立ちが非常にクリアーで心地よい。バイオリンは適度にリバーブがかっていて、長音のビフラートが甘美だ。

Disc1、全体に惚れすぎて評価不能。

Disc2はそれほどでもない。もちろんすごいのだが。

ちなみに、付属のドキュメントも読み応えがある。Bachの宮仕えの遍歴と、それぞれの上司にあわせた楽曲方向について論じてある。いかに彼が職業音楽家であったのかが よくわかる


(余談)

Bachのバイオリン曲といえば、高名なのは[無伴奏バイオリンのための〜]だ。このチェンバロとのデュエットは意外と注目されていないらしい。実際のところ、バイオリン自体の技巧でいえば、[無伴奏〜]にはかなわない。あちらはすべてを1つで行うが、こちらでは伴奏および対メロをチェンバロに預けているのだから。テンションは無伴奏に軍配が上がるが、楽曲の優雅さや演奏の幅では対等あるいはそれ以上だ。

方向性が違うので、一方を選ぶのは愚にすぎない。両方を聞くべきだ。できれば彼らの演奏で。

(余談)

私は完全にクイケン兄弟+レオンハルトを崇拝している。別の人の録音を視聴したり購買したりして比べているが、ある場合は即座に、ある場合は最終的にクイケンらに軍配を上げることが多い。当然ながら彼ら以外にも名演奏はあるのだが、彼らの場合は駄演奏を探すほうが難しい。−−例外はSEONレーベル版くらいだ。


/sigiswald kuijiken [3sonatas & 3partitas for solo violine](J.S.Bach)/

2000年録音、DHMレーベル。でも2001年発売。

無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータ。彼としては2度目の録音。

*独奏だけど1声じゃない*

(注:声:同時に進行するフレーズの数。音数ではない。)

バイオリン独奏なのに、2声や3声の楽曲ばかり。フーガまである。しかも、矮小化されたムリのある楽曲などではなく、声域も展開もフルに備えた楽曲だ。

バイオリンは4弦あるので、同時に4つの音を演奏可能で、かつ音階の移動もかなり自由だ。この楽器の特徴を生かせば、次のような技を繰り出せる。

作曲家Bachは、低音主体のパートも高音主体のパートもバランスよく織り成すことで、伴奏化を避けている。

ようは、《複数楽器でのトリオソナタと同じだけの要求》を独奏に課す。無伴奏を実現しやすくするための矮小化なんて持ち込まない。−−もちろん、この条件をクリアーできるフレーズは限られてくる。とくにフーガなんて実現させるのはシャレにならない。

厳しい条件にもかかわらず、Bachの無伴奏バイオリン曲には不自然や無理やりさはまったく無い。Bach自身がバイオリンもチェンバロもかなりの演奏家であったからこそ実現可能なのだろう。

この楽曲が存在すること自体が奇跡だと思う。しかも、クイケンは的確かつ魂を入れて弾ききった。楽曲としても演奏としても、奇跡の世界。−−数名の他の演奏家を聞いたが、機械的だったり、テンポ解釈がおかしかったりと、不満足なものが多い。

*個人的な聞きどころ*

これまた楽曲を取り出して評価など恐れ多くてできない。全体に良すぎる。畏怖なくしては聞けない。

Disc1は。

Disc2は。

*言葉:ソナタとパルティータ*

ソナタとは、原義的には《器楽曲》のこと。not vocalで、楽器が主旋律を取ることを前提とした音楽。

Bachの時代のソナタは4楽章で、緩急緩急と並ぶ。主キーは共通で、どこか1つに並行補完キーの楽章(CであればAmね)を入れるのが普通。これ以外はとくに縛りは無い。補完キーが第何楽章にあってもよい。個々の楽章がフーガだろうが三部形式だろうがなんでもOK。演奏楽器の数も問わない。

(注:狭義には、フレーズ様式としてのソナタ形式(レベルとしては三部形式などと同じレベルの言葉)もあるようだが、私は知らない。)

パルティータに関しては、調べたけれども分からなかった。楽章数や緩急にこだわらない器楽曲集なのかな?


12/16

/PUFFYつまみ食い/

最近、日本のねじれポップとして、PUFFYとSPITZを再評価している。その一端。

*アジアの純真*

ちょいアップテンポ目、テクノチックなシンセと8連打のギター+ベーという、手抜きみたいな不思議な演奏。PUFFYの2人のボーカルの合間には謎のボコーダーも入る。

この曲は、実は構成が非常識だ。1ループが「A-A-B-C-D」となっており、各単位が6小節。しかも、AとCがどちらもコードがトニック流しで、メロディ展開が導入部の作曲になっている。BとDはきちんと展開部やサビの作曲になっているから、A-Bで1曲、C-Dが別の1曲に聞こえる。

(注:A=「北京、ベルリン」、B=「開けドア」、C=「白のパンダを」

(補足12月23日:Aメロはトニックからじゃなかった。トニックFでC(ドミナント)だ。だが、メロもコード関係も微妙なところで、CがトニックでFがサブドミナントであるように聞こえる。うーん…)

CMなどで使った切り出して場合、メロディーが綺麗に聞こえるのはC-Dのセットだろう。だが、インパクトが強いのはA-B。歌詞のキテレツさもあり、有名なのはA-Bのほうだ。A-Bだけ聞いてコミック系だと思って楽曲を聞くと、かなりポップはC-Dが飛び出してくる仕掛けだ。

歌詞の内容も演奏も構成も、アイドルのデビュー曲だとは思えないキテレツさ。プロデューサー民生は何を考えていたのだろう。これで売れたのだから不思議だ。−−歌詞は陽水が言葉遊びで書いたらしい。

*これが私の生きる道*

ミドルテンポのポップ。微妙に昭和歌唱なノリで始まりつつ、ボーカルにクォートベンドを使わせたり(「近頃わたしたちはで1/4音上がる)、やたら充実したコーラスをつけたりと、プロデューサーが楽しむために作られたような楽曲。

ビートルズからの借用が散りばめられている。気づいたのは以下のとおり。

歌詞の力の抜け具合も奇妙だ。

もしあなたが不安だったら、助けてあげられなくはない。上手くいってもダメになっても、それがあなたの生きる道。
これから私たちはいいところ。最後まで見ていてね。くれぐれも邪魔しないでね。

こんな風に突き放すアイドルはいなかった。

*渚にまつわるエトセトラ*

フィルスペクター真っ青のストリングス上昇メロディーによるイントロ! 追って始まるのは、心地よい16beatのドラム、ラテンパーカッション、オクターブジャンプの8分ベース。《ノリノリをやろうとTV向けオーケストラが苦労して失敗してダサくなったような感じ》を堂々と再現している。ちょうど[ヤングマン]みたい。

補足:そのまんまズバリのストリングスの有名曲があるのだが、思い出せない。)

そのコンセプトを明かすように、Aメロは単音メロディで、PUFFYはまったく感情を入れずに、ただ音を乗せるように歌う。歌詞もモダーンに意味不明。

車で駆けてこ キャラメル気分で はじけるリズムで 気になるラジオはBBC

このバカバカしい演出にもかかわらず、いや、それを極めたからこそ、そのあとのBメロの持つドラマチックな展開と、それが引き出すCサビのリズミカルさが映える。全体として、この楽曲は非常に美しい。Cメロ前半の「渚へ行こう はにかんでいこう」に対するブラスの対メロと、後半に対するストリングスの上昇音を聞いていると、あまりの感動に胸が切なくなる。これをやれたら、音楽家としてかなり幸せだと思う。

*たららん*

3連ポップ。これは傑作だ。メロディが綺麗、演奏が綺麗、乗せる声が綺麗だ。PUFFYってこんなにも可愛く歌えるボーカルだったのか。−−実はPUFFYは楽曲によって歌い方にかなり差があり、キュートからハードまで自在だ。性格俳優的なボーカルとして、椎名林檎に先駆けていたと思う。

イントロのリードは、めずらしいくらい良質なサイン波シンセ。サビのコード展開が綺麗に複雑。PUFFY随一の本格ポップじゃなかろうか。

*アジアの純真 陽水+民生版*

イントロで鳴るのは、ジャリジャリ系に歪ませたギター1本。トニックFでF7-C7のリフを、1拍のベー弦+2拍のカッティングで決める。リバーブはほとんど無くソリッド。これを追うように、ロングディレイを被せたwah wahギターがリードを弾く。−−この段階で、すでにとんでもなくカッコよい。

PUFFY版と比べると、かなりゆったりのテンポ。リズム部隊はドラムもベーもギターも表ノリを強く強調して、余裕のあるブリブリR&Bを鳴らす。全編にwahのギターが2ndメロディを入れており、buddy guyにも負けないような黒いノリになっている。−−日本人でもここまで良質なブルースを弾けるとは、感心きわまる。

4+8小節のイントロのあと、陽水が叫ぶ。最初の「北京!」の段階で、声の張りのよさに腰が抜けるほど。このグルーヴィーな演奏にこの声が乗ると、ここまで予想外の格好よさになるのか。

8小節ごとに民生も歌う。民生のほうがシニカルで、声の変化が大きい。2人とも艶のある表現者なので、異様に充実した録音になっている。


12/2

/自宅録音 QY70とBR-8/

*ヤフオクでgetだぜ*

11月25日(日曜日)、ついにQY10がオシャカになった。翌日にYahoo!オークションでQYシリーズを探すと、なんとQY70とBR-8がセットで67000円! なんたる幸運か。即getしました。−−なお、QY10は1000円から出ていた。

*QY70*

QYシリーズの3型目のはず。

過去にQY20をイジったときはQY10と大きな差は感じなかった。ところが、QY70は違う。段違いだ。

エディット面では…

すげー。ぜんぜん使いこなせねー(涙)。

*BR-8*

BOSSのデジタル8trMTR。なぜかZipDiskをメディアに使う。ツマミがアナログ系なんで、マニュアルなしでもほぼ操作できる。

余談:私、高校1年のとき、1ヶ月だか2ヶ月だかバイトして6万貯め、アナログ4tr買ったんだよなあ。それがいまや、ヤフオクでシーケンサー付きデジタル8trが送料込み7万。PCでCD-R焼けるし。もう時代が違いすぎる…)

これまたエフェクター内臓。録音時に複雑なパッチ=エフェクトを掛けられる。録音後ですらリバーブとコーラスだけ弄れる。便利だ。






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