(7月30日(火)18:00)
タバコとコーヒー
new york snow
チョコレートのかたまり
とけちゃうよ
アイスクリームベイベー
RCのディスコグラフィーを探していて発見。くわしいなーと思ったら、キヨシの公式サイトか…
先日、[つ・き・あ・い・た・い]を奥田民夫がカバーしたのを聴いた。見事なブルースロック。1小節おきにギターリフとボーカルが鳴らしあう。本家RCの演奏よりもビビッドで上手いのは当然だが、感動の記憶はすべてRCに直結する。
いまはRCはほとんど持っていないし、記憶は美しいままそっとしておくほうがよいと思うが、それでも【シングルマン】【EPLP 1/2】だけは死ぬ前にgetしようかと思う。なお、シングルマンに関しては、私はスローバラードよりも[ヒッピーに捧ぐ]を好きで、一番聞きたいのは[ファンからの贈り物]。
fell so badのB面を聞きたいが、こここそ記憶のまま美化しておいたほうがいいかもしれない。heart aceも。
わたしは小学生のときに爆風スランプが好きだった。1stと2nd。 はじめて聞いた《TVで流れない音楽》だと思う。
ギターのパッパラー河合はking crimsonファンでもあり、 私はサンプラザ中野とパッパラーのオールナイトニッポンで [21世紀の精神異常者]を知った。 インディーズというものもこの番組で知った。 中野の紹介で有頂天KERAを知り、その後人生選択を大幅に間違えたわけだが、 第一歩としてすでに中野の段階で破綻済みだったかもしれない。
1stのラストの曲[すいか]は、 驚くことにみごとなサイケデリックプログレだ。 レコード会社はポップな冗談曲を多数期待していたと思うが、 それに応えつつ これだけのイタズラをしてのけたことを、 15年以上離れた今、ひさびさに振り返って強く感謝する。
爆風スランプ2ndのA面ラス曲の歌詞を引用しよう。
赤くてでっかいぞ東京タワー
偉そうに立ってる イヤなヤツだぜ
だからぶっ飛ばせ東京タワー
演奏が、ジミヘンっぽいギターを中心にした、ハードロック色のあるヘヴィファンク。 こういう音楽をやりつつ、 歌詞とパフォーマンスはちゃんとコミックソングになっている。 自分らに対するパブリックイメージやらレコード会社の要望に応える。 商売と理想の折り合い。 “音楽で喰う”プロの正しいあり方。 もちろん、これが“唯一の”正しいあり方だとはいわない。 しかし、理想と自分勝手では商売にはならないのだ。
12inch[らくだ]は、ファンク部分とYESプログレの見事なコラージュだった。 そのB面[やしの木かげ]は、ディスコヒットチューン[she is the bad mama, jama]をベースにtower of the power風のホーンを取り混ぜたもので、その当時(私が小学6年だったと思う)ポップシーンで活躍して商業的に成功していたいたロックバンドの中では、これだけブラック音楽をこなしていたのはめずらしい。(ほとんどがゲスト演奏なのは当然だが。)
いまならば、ポップ市場にブラックエッセンスが求められているので、これを誰かが再リリースしたら、けっこう売れると思う。ダンスマン的な展開が必要かもしれんが。
そんな私は、東京に来て中野区住民となり、 住民票関係の申請で中野区役所にいくと、 となりにある中野サンプラザを見て感慨にふけるのだった。
(追記8月4日:その後)
いうまでもないだろうが、[ランナー]の時点ではもう決別していた。 この曲や[リゾラバ]ではイカンのだ。 後世が爆風スランプを聞かすならば、[たいやき焼いた][無理だ!][たがやせ世田谷]を代表曲にしてほしい。
live recording at Feb1957、bule note
モノトーン写真に単色指し。2段鍵盤のオルガンを前に、パーティースーツ姿のjimmyが。大きな手を広げ、腕をクロスさせて、鍵盤をがっしり鷲づかみ。ライブ最中ならではの厳しい表情、開いた口。
ーーいまにも息遣いが聞こえてきそうな凄い写真だ。まずはこのジャケットで惚れる。こんなにカッコいい鍵盤弾きは、私はかつて見たことが無い。
小学校に置いてある足踏みオルガンやエレクトーン(YAHAMAの商品名)と、ここでの電子オルガンは、似て非なる楽器だ。
一般に電子オルガンには多数のスライドバーとつまみがあり、これで音色を大胆に加工できる。
こういうオルガンがいつ出来たのか、私は正確には知らない。が、Jazzの世界にこの電子オルガンを持ち込んだのはjimmy smithだ。ただのオルガンは常に単一の表現になるためエモーショナルではなく、jazz向きではない。が、彼はリアルタイムにガリガリと設定を変えながら演奏する奏法でさっそうと登場し、それまでダレも聞いたことのないタイプのエモーションをステージ持ち込んだ。しかも“火を噴くような”激しいbopなアドリブをこなす。−−そして彼は一躍スターの座に登りつめた。
(注:jimmyを語るときの定番表現が、“火を噴くような”だ。聞くと納得できる。)
drumがark blakey。guitarに、当時売り出し中だったkenny burrell。なんと贅沢なbop bandであることか。
bass担当のクレジットがない。いないのか? 一部の曲ではjimmyのオルガン足踏みベースだと判別できるが、jimmyがアドリブしまくっているときに 同時にこれだけのベースは弾けないと思う。…が、弾けたんだろうか?
ライブは、volume1と2の2枚に分かれて販売になっている。
volume1は歌えるテーマを持った作品、2はよりハードバップな構成。
2枚合計で80分程度。これは罪だ…。それでも。躊躇せずに両方買うべし。
オルガンとアルトだけの演奏。
オープニングでは、オルガンのリズムバッキングだけ。この段階ですでに、音と音をゴリゴリとぶつける感触の心地よさに酔う。どこをどう弾くと箱が震えるか、完全に理解しているのだろう。また、リズムの揺れ具合も抜群。至極至福。
アルトは、メロディを丁寧に感傷たっぷりに朗々と歌い上げる。ドラムがいないだけに、このホールのリバーブの気持ちよさがダイレクトに聞こえる。あまり遊びの無い演奏だが、超有名曲だけに このほうが印象的だろう。−−あいまに入るjimmyのカウンターがテンション高くて関心。
2ndパートではaltoがアドリブに入る。同時にjimmyの攻撃も激しくなる。上下2段の音色の違いを大胆に活かし、またトレモロ具合を変化させつつ、楽器のキャラクターを無数に変えて客の前に迫る。
3rd/4thパートjimmy1人になる。が、jimmyはメロディーをbop的に弾くのではなく、基本的にはブロックコードでのバッキング的な演奏のみで迫る。それがまったく単調ではなく、フレーズ表現も音色変化も奇跡のようにエモーショナル。脅威としか言いようがない。
5thでテーマ再現して収束。
−−支払った金額はすでに満足させてもらった感じ。
大ぶりのブルース進行で、alto/guitar/organとアドリブを繰り広げる。テーマ部での、ギターのベンディングによる不思議な浮揚感のフレーズが素晴らしい。
リズムセクションはおおようなゆったりswingに始まり、アドリブがノってくると倍ビートのjumpを叩く。アドリブ交代のタイミングで強いドラムフィルが入り、またゆったりswingに戻る。このリズム展開だけでも十分に聞く価値あり。
あらためて、jimmyもburrelも2人してバッキングも上手いな感心。相手のメロをジャマすることなくリズムを入れつつ、そのリズムで和音付加や展開を見事に促す。altoのソロのときは2人でバッキングするのだが、ちゃんと融合して2人同時にバックを勤める。よほど打ち合わせするのか、ウマが合うのか…
明確なテーマ部を持たずに、イントロから“火の噴くような”猛烈なオルガンアドリブ。リズムが非常にゆったりで、ドラムはハイハットだけを提示する。この中で、音符数にすると32分音符くらいの激しさで入るのだから、テンション高くてたまらない。見事なハードバップ。
ギターが引き継いでメロを決める中で、だんだんとドラムがフル参加してくる。この時点で倍ビートに収まって、一般的なswingクラスになる。心地よい。
が、しばらくするとリードをアルトが引き継ぐ。この段階で、またリズムは半ビートの重たいものになる。アドリブの興が乗ると倍になり…と、そういうリズム展開を繰り返す。
倍ビートでのリードのドライブ感も凄いが、個人的には半ビート部のリズムのヘヴィさを強く押したい。バスドラおよびリズム演奏のorgan/guitarが織り成す低音攻撃。圧倒的な太さが心地よい。
この楽曲はjimmyオリジナルになっている。上手い。
こちらはparker作曲。ハイテンポで1-5のリズムブレイクとスケール提示を繰り返す…という、恐ろしくpureなbop。これを3人でユニゾンで入り、展開でハーモニーまで見事にキメて見せる。素晴らしいテーマ。
このライブの他のどの曲よりもハードバップな演奏。ギターもドラムも嬉しそうに暴れまくるのが心地よい。burrelのギター、ソロも凄いが、jimmyがソロを獲っている間のバッキングのほうが凄い。この楽曲の魅惑についてドコかに軍配を挙げるとしたら、迷わずにburrelとblakeyのバッキングだ。
ハードながらも、ずいぶん明確に分かりやすい演奏なので、安心して人に薦められる。
jimmyオリジナル作曲のbop曲。メロ展開もリズム展開も複雑なのは、映画音楽の経験が生きているのかな。
テーマ部分はともかくとして、アドリブ部分の乱れが激しい。頻出する不協和音とパーカッシブなoarganプレイは随一の出来だが、楽曲としてのまとまりが足りない。
クレジットを見ると、jimmyとblakeyの2人しか演奏していないことになっている。…だとすると、これは本当のjam状態なのかな。だと思えば、この鬼気迫る録音には意味がある。私の好みは(2-2)のほうなんだけど。
jimmy作曲のシンプルなブルース。どこにでもあるようでいて、実は個性の強いテーマ。
イントロの4小節*4のループは、ブルーステーマの後半部分を展開したもの。実際にはドミナントから展開しているのに、ベースセクションはトニックのままでテンションを上げる。しかも後ろノリで2・4のみにビート。なんとクールなバリエーションを用意することか! このあとだからこそ、あのひょうげたテーマが生きるのかもしれない。
ここまで3曲がハードバップだったので、アドリブ部には多少の物足りなさを感じる。が、それは相対的な気分のもの。この抑えたクールネスもまたgood。
studio 1964、verve
映画[joy house][carpetbaggers]のための楽曲を含む。贅沢なビックバンドによるスタジオ録音。この作品によりjimmyの人気は浮動のものになる。
私は、最初に【at the organ】でのjimmyの有機的なオルガンプレイに感動した耳で、それを期待してこの作品を聞き、ずいぶん肩透かしを食らった。考えてみれば当たり前で、《ミンコンボによるセッションライブ》と《ビックバンドによるスタジオ録音》では色が違って当然だ。
本作では、アドリブ部はギター+オルガンの4ピース。テーマ部およびフィルでホーン部隊が参加する。アドリブリードは原則としてjimmyのみ。
イントロでは普通のオルガンブルースかと思いきや、かなりハデにサックス部隊がリズムを入れてくる。が、フィルとして効果的に鳴ることに始終。テーマメロには参加しない。
アドリブ部では、ギター3ピースコンボの上でjimmyが かなり激しい早弾き。後半ではサックス部隊がハイテンションのブレイクを再現して参加、盛り上がったままエンディング。たった3:24。もったいない…
映画テーマ。introはリズムが6+3の変拍子で、ドラム・ベース・チューバのみで重たく開始。ドーンとオーケストラがフィルを入れると、3+3+3の安定ビートに定着。
楽曲はJazz風ではなくて、純粋に映画サントラ。この編成でやると、ちょっとプログレッシブロックみたいな気分。
テーマのあとはjimmyのアドリブ+ラテンパーカッション。ホーン部隊のリズムフィルが非常に効果的。後半、テーマが戻ってくる部分のハイテンションは最高。こんどはjimmyがリズムに廻る。
個人的にはZappa[grand wazoo]を再発見した思い。
ギターがそつなく丁寧にテーマを弾き、jimmyとオーケストラが合いの手を入れる。テンションは高いが、あくまでしっとりなのがセレナーデか。
アドリブ部ではjimmyも弾きまくるのではなく、休符を多く取り混ぜた、緩急のある演奏。が、テーマ再現部のバックでは“火の噴くような”激しいバップ演奏を見せる。すぐフェードアウトなのが残念。
jimmy作曲。ミドルテンポの心地よいswingによるブルース。オルガンの揺れを上手く活かしたテーマ。1stテーゼではギターのスライドを活かしたバッキングで滑らかに。2ndテーゼではホーン部隊でテンションを高めてゴリゴリと提示。贅沢だなあ。
アドリブ部は単純な4ピースコンボで始まり、順次贅沢にホーンが…って、このアルバム全部この構成なんですけどね。この楽曲ではフィルの当たり方が効果的。
シンプルで大人しい楽曲。テーマ部のホーン参加も、ミュート気味に白玉を吹くだけ。
かとおもいきや、アドリブの後半で、異様なくらいにハイテンションな和音を持つメロを引っさげてホーン部隊が登場。リズムがナロウになっているだけに、この突撃は印象的。−−曲テーマとは別に、ここまで明確なメロディをホーン部隊が吹くのはこの曲だけか。
2001年リリース、death row
店頭でcalifornia loveを聞き、そのテーマ(zapp/rogerのサンプリング)のファンキーさとオケの重さに大感動。そのまま視聴機で聞くと、どれもこれもオケがgood過ぎる。私のhiphop感は1980年代のpublic enemyで止まっていたのだと激しく後悔。hipをここまで鋭い“音楽”に昇華させるアーティストが出ているとは思わなかった。
rap自体はとっくに市民権を得ており、どんな音楽でもrapを乗せておかしくなくなっている。hipなループに関しても、rap artistではなくて普通のblack singerがオケにその手法を取り込んでいる。rapと非rapの境界はあまり気にならなくなっている。−−そういう方向に変化したのだと思っていた。
(注:もちろん、hiphop登場以前にもrapはある。funkのライブでMCがいるのは珍しくないどころか、JBのショーはMCなしでは成り立たない。本人もMCする。)
ところが。このDr.Dreの作品は、まごうことなきpure hiphopであり、その進歩系だった。他の何かには拠っていない。−−G-Funkと名乗りたければ、その単語を使ってもいい。
この作品は、音楽を知らないチンピラがただ吼えているものとは一線を画す。自ら高度に演奏でき、音楽の成り立ちを理解したものが、自分の表現ジャンルとしてhiphopを選んだ結果の作品群だ。−−それもそのはずで、Dr.Dreはrap-er/mc専門ではなく、プロデュースが専業とすら言える状態。
まるで説明不足だが。ともかく私はコレを長い間知らなかったことを非常に後悔した。その後いくつか人気rap artistを漁ってみたが、Dr.Dreのレベルまで音楽を昇華させている例には出会っていない。
ループは、不安的なギターの白玉。これはLPをわざと揺らしているのだろうか。それに、“いかにも”ながら心地よい16のシェイカーのブレイクビーツ。スネアのかわりにリムショットが入るループ。2小節ループで、2前にシンコペーションで女性のため息が入る。8小節ごとに、シンバルがわりに「しゅわぁぁぁぁぁん」と鳴る(ガズラーか?)。
ここに、締まったエレキベース(これは自分演奏だろう)が16分*4つで見事なクールネスを出す。Cm-G | G-Cmという、hipとしてはちょっと意外な展開。ここからも知性の片鱗が見える。
このうえで、dreとsnoop doggy doggが滑らかにライムを廻す。展開は、シンセがいくつかのメロディを持ち込むことでなされる。A-B-A-B-間奏…というタイプ。Bはラップが2人掛け合いになり、同じリズムのライムをキープする。ちゃんとAとBが毎度区別できるのが立派。
ループが圧倒的によく出来ている。アーシー感が完璧。ゆっくりのユレ16beat。基本リズムは(8部で)|f--a♭ --g- | ---- c--- |とシンコペーション。この重いリズムに、ベースが見事にコード展開を織り込む。エレピがユニゾンして重さを増す。この2小節のラスでは、SE的なシンセがフェードインでフワッっと舞い込む。
この重いループの上にシンセで白玉メロを乗せる。部分的にメロが動くのだが、そこではポルタメントを効かせまくって魅惑的。
ベーシックループがこれだけ作りこんであるにもかかわらず、これまたちゃんと曲展開する。しかもサビも凝る。ハモる2音のラップを提示したあと、女性ボーカルを交えて「レイド…バック!」と重たくつぶやく。シンセもメロを足す。なんと贅沢なことか。
もし、このアルバムから1曲だけ選ぶとしたら、この曲にする。
ゆったりユレ16のブレイクビーツ。バスドラのシンコペ付き16分2連打が非常に効果的。シンセベースは小節の頭を知らせるために付点8分登場するが、無音程にうねるだけ。ウワモノもパーカッシブな不協和音提示に専念。
−−この状態でも、ちゃんとテンションを上げる和音展開を選ぶのだから、職人芸だ。
この楽曲は、張りのある女性(the lady of rage)がメインで、サビ掛け合いでsnoopが参加。後半の「I like rock this, rock this!」「say why, say why?」の部分が見事。
(余談:(4)と(5)は映画[muder wa the case]用楽曲)
イントロ/サビバックに選んだシンセの音色とフレージングで勝利。ディストーションのかかり具合が気持ちいい。これに加えて誰かのシャウト声が被さる。
リズムは重たい8beatのバスドラとベースを基調。|de.. .g♭f. | b♭a.. .ab♭-|という半音の使い方が見事。ほとんどエクスプレッションのないベタ打ち込みっぽく聞こえるのに、リズムを引っ張る力は非常に強い。
ウワモノは多数の発振音によるブロックノイズ。音の波の中には[twilight zoon]のテーマも伺える。
すでに音の洪水で凄いことになっているが、ちゃんと追加メロは用意される。ハープっぽいアルペジオと唸るシンセ。サビはサビで、上述のディストーションシンセが入り、爆発音ノイズとラップが入る。
(rap担当はDreとice cube)
ローテンポのplain 16beat。基本のバスドラとスネアに16分のディレイを掛けており、それだけで音場はトリップ感たっぷり。加えていくつかの金属ノイズを足して音場を作る。ここに綺麗なベースとエレピの和音演奏を添え、非常にクールなループの出来上がり。
rapするのはsnoop。彼の声は高めでひょうげた感じがするのだが、このオケに入るには彼の声がぴったりだ。声まで重いとドライブしないだろう。
基礎のベー音がスッキリしているので、展開でのウワモノ乗せは素直にやりやすかったと思う。が、それでもサビ部分の金裂き声の女性コーラスを広げる音場は意外性たっぷりでカッコイイ。これに絡むシンセの擦れた音色もいい。半音ずつ下がるだけのメロだが、落ち着く先の音程がハイテンション部分なのはさすが。
ラップは全体に普通。オケの雰囲気もold school rap。ラテンパーカスと震えるストリングスが効果的。curtisかと思いクレジットを見たら、donny hathawayだった。
原曲を知らないので履き違えているかもしれないが、ベースフレーズの作り方が非常に見事。サビ部に乗るフルートのメロも素晴らしい。
mothership connectionですよオッカサン! 原曲は2部に分かれていて、やたら根明かな前半と、マイナーコードによる厳粛な後半(star childの降臨を待つ部分)。この楽曲は、後半を展開させたもの。
基本ループの中身は、オリジナルを彷彿とさせつつも、新規の演奏。あの見事なwah wahカッティングはsamplingかもしれない。ドラムはまったく別の(固めの)ブレイクビーツ。ベースは、オリジナルを元に、より雄弁に組み直したもの。無性にファンキー。右チャンネルにはオリジナルを完全再現したシンセフレーズで「天にも登る気持ち」。展開部では、そのフレーズに絡むようにもう一本新メロが入る。
サビ部分は、オリジナルのコーラスがsampleで入る。その合間あいまにラップ。ブレイク部分には原曲前半を断片的に入れる。
この場にgeorge clintonを参加させたいくらいの暗いファンクネス。(6)ともどもタイトルまでオリジナルに捧げているので、カバーと呼んでよいのだろうか?
Dreが2pacをproduceした楽曲。2pacの重く破壊的なライムをDreのクールな知性が包んだ感じか。
サビ歌はzapp/roger[west coast pop lock]のフレーズをまんまsamplingして作っているが、演奏部分はまったく違う。圧倒的に重いビート、見事なベースとピアノのリズム、綺麗に入る白玉エレピ、合いの手ホーンセクション。いくつかの金属ノイズと笛(ホイッスル)が効果的に並べられる。展開部に入るシンセのメロディも異様にリッチ。
元のzappのトーキングモジュールによる比類のファンキーさに甘んじず、ここまで音楽を作り込む根性が凄い。この曲は、samplingは“創造性の後退”ではなく“創造の手段”であることを証明するのに見事な好例だ。と思う。
Dreとsnoopが主演の映画[the wash]のテーマ。
名曲[smiling faces (in mind)]の基本進行をそのままsample。すなわち、|c.c. d.d. | cacd ----|。そこにピアノユニゾンを新たに足し、展開部ではシンセでハーモニーまで足す。これがe♭流れ、g流れ、b流れ、d流れまである。ここまで行けば完全に新アレンジ・新発想といってもいい。−−これも“創造の手段”の好例と言って良いだろう。
ここで一席、偉そうなことを書いてみる。
音楽は模倣・引用・展開して生きるもの。名を成すartistであるためにはオリジナリティーは必要だが、それと“from scratchであること”を同一だと思ってはいけない。
ゼロ起こしだけを尊いとしないために、簡単なアンチテーゼを掲げる。−−楽器すらオリジナルに作るべきか。音階すら作るべきか。録音媒体すら作るべきか。−−こういう無理やりな例でなくても、作曲しないjazz playerは作曲するplayerよりも劣るか。カバーはオリジナルを越えられないのか。bach演奏家はクズか。
samplingを使おうが、mix pasteを使おうが、音楽の出来を決めるのはartistの技量とセンスと想像力だ。それは、自分で演奏・作曲する場合となんら変わらない。
(2002年演奏 sanctuary/brimel)
braian wilson本人と、ゴージャスなバックバンドによる、"Pet Sounds"全曲ライブ。正直涙もの。マイナーな自主レーベルみたいなところの配給だし、ジャケがオレンジ・黄色・赤のみの荒い品質のものだが、ブートではないようだ。
(余談:新宿disk unionでBGMでsloop john bを聞き、その感動のままtower recordで衝動買い。towerがpoint倍セール中だったのだ。ごめんごめんごめん>disk union)
バンドはbrian入れて8人。生の管とvibeつき。安定した巧演奏とコーラスワーク。演奏は原則としてオリジナルのbeach boysのまま。雰囲気やテンポの変化、装飾音までも忠実に再現。brianの声は低く丸くなっており、あのころの面影は無い。それがかえって新鮮な味となる。
聞きながら、多くの歌をいっしょに口ずさむ。自然にそうなる。(3)you still believe in me、(8)sloop john b、(9)god only knowsは特にお気に入り(元から好きか)。
ノスタルジー込みで冷静な評価になっていないことは認める。それでも、このディスクは尊い。冒頭のwouldn't it be niceのintroアルペジオが数箇所ミスっているのが気になる以外は、実に楽しいライブだ。
(追記9月7日:3回聞いたら飽きた。でも、残しておいて、たまに聞こう。そういうファミリアなアルバムだ。−−というのも、私はスタジオ版を持っていないからだが。)
(余談)
beachboys その後のツアーのとき、客席に細野晴臣がいた。brianの演奏のfamilierさに 細野は思わず涙したという。このdiscでもその気持ちは十分わかる。
解散脱退後のbrianは、精神病の様態がかなり悪く、ほとんど人前にはでなかった。ツアーはおろか、新作発表も行なわなかった。1998年ごろ(うろおぼえ)、かなりの間を置いて、かなりのリハビリをして、彼はniceな小曲your imaginationをリリース。中ヒットを飛ばした。
(1994年録音 denon/columnbia)
モザイクSQのSQ集【opus 64 nos2 ,4 ,5】で、ハイドンの軽やかさを非常に気に入ったので、クイケン先生のハイドンも試す。店頭でこの曲の解説を見ると「重い遅い曲ばかりを集めた厳粛な楽曲」
とある。ひょっとしたら趣味に合わないかなーと思いながらも、キリストの言葉を集めて曲タイトルにしたセンスに惹かれて購入。[渇く。][成し遂げられた。]など。
(注:SQ:string quartet:弦楽四重奏、およびそのための楽曲の双方を指す。)
結果。パス。やっぱり重過ぎる。
ハイドンはバロック後期に現れて、クラシックを作った作曲家。シンフォニーやクラシック=ソナタの形式をfixした。ごく大雑把にいうと、クラシックはメロディ主体の形式強度。コンダクターがとても強い。バロックはリズム主体でアドリブ重視。分散和音やポリフォニーが特徴で、演奏家がかなり強い。私はクラシックは苦手で、バロックが好き。というかバッハが好きだ。
上記モザイクSQの楽曲は、バロックの良い点とクラシックの良い点がきれいに融合していた。が、この楽曲(十字架〜)はかなりクラシックだ。モノのメロディー、シンプルなバッキング。メロを歌わせるためにテンポを極端に落としたり、演奏をSTOPさせたり。
この楽曲は、テーマがテーマだけあって、1曲を除いてすべてが重いテンポ。研ぎ澄まされた一本のメロディが、ゆっくりだが極度の緊張を持って進む。聞き手にかなりの“のめりこみ”を要求する。ような気がする。
もちろん悪い音楽じゃない。が、私はあまり楽しめない。もっと明るい軽やかなのを求む。
(1998年録音 philips/polygram)
レオンハルトのカンタータ全録音から、世俗カンタータ。BWV215がザクセン公に捧げるもの。BWV208が狩のカンタータ。
3声。頭にコラール。ついでテナー、バス、ソプラノの順にレチタティーボとアリアをこなし、最後に3声ポリのレチタティーボを経てコラールで〆。9曲。
このコラールはどちらもティンパニが鳴る。私がティンパニを嫌いなだけかもしれないが、楽曲も録音も悪い気がする。曖昧な響き。
それ以外のはレチタティーボもアリアも非常に良質。どのレチタティーボも、ボーカルと器楽メロの絡みが見事。特に(8)のレチタティーボ、後半の3声になる部分(事実上デュエットのsong)は絶品。
演奏全体にキビキビとしたリズミカルなもの。さすがレオンハルト、磐石です。
4声、なぜかソプラノ2本。冒頭にはコラールなし。順繰りにソロを採りつつ、中盤にコラールとデュエットを配する。楽曲綺麗。(16)の器楽部分の付点の装飾音が見事。(18)は器楽・声楽ともにメロがとても秀逸。(21)のデュエットは実際にはバイオリンとあわせて3声で見事な絡み合い。
気になるのは(11)(最初のアリア)。テーマが狩だからか、歌い手に極端なビフラートをやらせており、ちょっと野卑な感じ。私の苦手なバロック=トランペットが中低音域で暴れるのも気になる。が、これはいままで聞いたトランペットのなかでは随一の上手さだと思う。演奏家クレジットなし。残念。
(1998年作品 death row)
Dr.Dreを買い、非常に気に入った。この手のギャングスターラップやG-Funkをほとんど知らなかったと反省。public enemyの時代から、音楽はもっと進んでいるのだなぁ、と。
そこで2pacも購入。1996年の事故死による一気にカリスマ化しており、ネットのp2p系でもかなりの大量流出をしている。これをツマミ食いした段階で、相対的にDr.Dreより趣味に合わないとは判明済み。だが、[dear mama]は名曲すぎるし、Dr.Dreとの競演[california love]も傑作なので、ともかくbestを試す。
邦版を買ったので、解説やらライム翻訳やらを読める。解説者自ら「ライムは支離滅裂」
「仲間の死によって精神不安定になっていく様子がわかる」
「ライムというよりは、青筋を立てた2pacが怒鳴り散らしているだけ」
などと投げやりなのも雰囲気か。
解説の雰囲気やライム翻訳を読んだところによると、《ぶっつけ本番でライムまくしたてただけ》の楽曲がほとんどのようだ。ある程度の筋は決めてあるのだろうが、内容なり押韻などを突き詰めるタイプのひとではないのだな。野生児、本能男児。製作も、ベーストラック→ラップ→バックミュージシャンやDJによる加工→リリースなのだろう。本人はラップ以外の音楽には関わらない感じ。
その荒れた感じがカリスマたる由縁か。ただたんに本当にギャングだというだけか。(かなりの数の殺傷事件があるし、グループを挙げてノートリアスBIGと殺し合いもしている。)
結果、音楽としては気に入らないものが多いが、人物としては興味深い。比べると、Dr.Dreはミュージシャンであり、2pacはギャングスターMCなのだな。犯罪暦も凄いし、言っている内容も。
トラックあるいはライムが気に入った楽曲は次のとおり。
トラックがマイナー基調のいまどきのソウル。new jack swingで心地よい。サビは女性ボーカルがテーマを出す。
K-Ci&JoJo参加。サビのコーラスを歌いおろし。トラックはクインシージョンズ編曲のエレクトリックな演奏(“body heat”)をサンプル。この2者の取り合わせ、かなりgood。
produceはDr.Dre。ちうかこれはDreの作品だな。重たいベースとピアノによる見事な1小節ループ。贅沢なウワモノ展開(ホーン、シンセ2種)
サビにZapp/Rogerの[west coast poplock]をまんま使う。最高のトーキングモジュレーターの歌。トラックとの融合も見事。
わたしは店頭でこの曲を聴き、Dr.Dreに惚れた。
重いゆったり24beat。低いラップ。サビも低く吐き捨てるように叫ぶだけ(いちおうバックで男性が歌うけど)。
「おまえら、俺が死んだあと、どれくらいの間ならば悲しんでくれるんだい?」
この重苦しい狂気は好きだ。−−実際のところ、本人が想像するよりも何倍も愛されつづけているのも面白いかな。
大傑作バラード。ごくごくローテンポの24ながら、明るいエレピの白玉と見事なギターフレーズのループで爽やかに廻す(joe sample“im my wildest dreames”?)。非常に重いラップで、黒人街の(日本人から見たら)とんでもない不良の育ち具合を語る。それを反芻しながら、母に対して苦労を詫び、生を感謝する。
サビで女性コーラスのバッキングと男性ボーカルの歌を従えながら、2pacは低く低くつぶやく。you are appreciated.
−−感謝してます。
アメリカンブラックのマザコン信仰は非常に有名。前にj-wave(FM)でクリスペプラーがこんな風に説明していた。
「babyfaceなんて名前のトっチャンが、これまたboys2menなんて名前の青年軍団をプロュースして、母の日の賛歌を歌わせる。これが大歓迎される。その雰囲気こそがアメリカンブラックです。」
その気風が、このクソッタレのギャング野郎にここまでのバラードをラップさせるならば。マザコン万歳ですな。
明確なクレジットがないが、クインシーの楽曲をかなり丸々使った大ネタの模様。微妙にprinceの[do me, baby]っぽい。コード進行やベースが酷似。スネアドラムの音色やバスのパターンもそっくり。
メイントラックは上記のとおりで、ずっと女性ボーカルのハミングが入る。サビはこの女性の歌となる。
(余談:2pacにはZapp/Rogerのサンプリングが多い。好きなのかな。)
(2001年作品 motwon)
[take a message]をラジオで非常に気に入って、新譜のときに店頭で試聴して「全体としてはイマイチ」と感想を持った。が、ネットで数曲つまみぐいしたら やっぱり好み。とくに(2) [burning bridge] のイントロのピアノとコーラスに惚れ惚れ。でもCD買ってじっくり聞いたら、やっぱり気に入らない。
悪いわけじゃないんだよなあ。でも気に入らない。なぜだろう。自分でもわからない。声の線が細すぎるのか? 演奏が軽いのか? −−まあ、とりたてて「これがレミーシャンドです」と人に伝えたくなるような楽曲がないのがイカンのだろう。
それでも、上記(2)と(8) [rocksteady] はイイと思う。けどこのCDは中古屋行き。
(余談:タワー店頭のPOPでは「マーヴィンの再来か」と書いてあったが、どちらかというとカーティスに近いと思う。)
(2000年録音 naxos)
作曲家 大栗(1918-1982)は、“大阪のバルトーク”の異名を持つ。祭囃子や民謡の音階や荒々しいリズムを取り込んだ現代音楽。激しくて面白い。
が、論ずるほど現代音楽には明るくないので、「面白かった」のみ。
そういえば、naxosの日本人シリーズは【日本管弦楽名曲集】も持っている。外山雄三[管弦楽のためのラプソディ]の 民謡同時演奏のポリさは凄かった。あとは管弦楽むけ編曲の越天楽などを楽しめる。
新譜。試聴のみ。
脅威の解釈版。これの前ではbionbiですらおとなしく感じる。
たとえば、春の第1楽章。鳥の鳴き声の模倣部分。一般には多少テンポを落とす程度でビートはキープするのだが、武久は完全に音楽の進行を止めてしまう。桐山のバイオリンが高音で無秩序に弦を震わせる(鳴き声)。その合間を縫って中低音がメロを折る(そよ風?)。通常の演奏の倍以上をかけて模倣部を通り抜ける。
たとえば、冬の第2楽章。オーソドックスには美麗な8拍子による軽やかなポップソング。biondiはこれのテンポをわざと落として、かわりに16拍子にしてのけた。武久は、その間くらいのテンポで、なんと付点8分によるうねりまで導入してみせる。
これは凄い。凄いけど疲れる。試聴のみ。非購入。
ジャケはモノクロでボウイの顔アップ。目の模様はコンタクトか? 題字は180度回転で印字されている。裏面の曲クレジットはすべて打ち消し線付き。暗い。
album titleはheathan。邦題ヒーザン。辞書を引くと「異教徒、野蛮人」。これは邦題つけたほうが賢かったんじゃないかな>レコード会社。
1曲目sunday:重く重厚なシンセ重ね音場の中でボウイが低く歌う。耽美。サンプリングのギターがテクノチックかつロックなフレーズ断片を上乗せ。ミスマッチではなく融合効果で異空間を作り出す。上手い。
このsundayは間違いなく傑作だと思う。他のは…じっくり聞いてみんとわからん。私は#4も好き。重いほうが好き。激しいロックものは好きになれない。
邦版3000円で、いまは特典でremix演奏CDつき2枚組。そんなのいらないので、あとで洋版を買おう。
100点満点で評価すれば15点くらいか。ほとんどが演奏も歌もつまらん。radio on airの[onion song]で感心したのは間違いだったか?
唯一、[yer blues]は演奏と録音がいい。オルガンのうねり具合と、mixでのその表現力に感心。ベースのフレーズとビフラートも美味い。pan割が左寄せなのは趣味ではないが、この結果としてドラムの音場がスッキリするので正解か。このドラム、乾いた音で叩きまくって素敵で、タムやスネアの位置表現も立派。マイクいくつ立てて録音したんだろ。