/ballet#1/ 父さんなんていらない 母さんなんていらない 僕は生まれてこなければ良かった人間だ 新しい王のエドワードは 偉大だった祖父の外見は受け継いでも その頭脳は受け継がなかった わがままで金使いが荒く たた戦うことに情熱を傾けるばかり 彼は中世騎士の典型といえる男 中世騎士と言えば金を身の代とし 貧乏人を虐殺する輩ども こんな風に貴族の中央支配の試みは 一世紀かけて失敗するのだ 幸せに生きるのに 人間関係はいらない あまり好きじゃない,嫌いなんだ あんたを,奴らを,皆を そして僕を 警告 僕はもう僕じゃない イギリスは 筆舌に尽くしがたい惨劇に見舞われた その名は,黒死病 400万いた人民も200万にまで減った みんな死んだんだ バレエ  人生はバレエのようなものだ 意識するしないにかかわらす 好む好まざるにかかわらず 誰一人として踊らずにすむものはいない 国の経済は悲惨な代物だった 農業は成り立たないし 物価は上がる一方 労働者は賃金を 農奴は自由を求めて 立ち上がった バレエを踊るかのように 国民の怒りはやがて 腐敗しきった教会へと向かいだした 幸せに生きるのに 人間関係はいらない あまり好きじゃない,嫌いなんだ あんたを,奴らを,皆を そして僕を それまでイギリスには 公爵というものは存在しなかった エドワードが黒太子コーンウォールを創るまでは 今や彼の息子という息子は 誰も彼もが公爵と呼ばれている 息子といっても 領地ほしさに公女と結婚したにすぎない人々だが 父さんなんていらない 母さんなんていらない 僕は生まれてこなければ良かった人間だ エドワードは1377年に死んだ 結局イギリスがフランスに持つ領土は カレイと数えるほどの町が残されたにすぎない 西海岸に /ballet#3/ ヨハネはまだ16歳にすぎぬ甥のリチャードII世に とって変わって戦争を続け, 議会はすべての16歳以上の男性への人頭税を承認した。 これがきっかけで小作農たちは 税制と農奴性の廃止を求めて決起したのだった。 市民は彼らを支持し,ヨハネの宮殿は破壊され, 大司教そのひとも亡き者になった。 少年王リチャードII世は,根源からの救済を約束することで, ようやくのことで更なる破壊活動を避けることに成功した。 しかし,一度平静を取り戻すと, 政府は約束を無視し, 反乱の首謀者たちを絞殺したのである。