大槻ケンヂの新バンド。コア=パンク*メタル+叫ぶモノローグで、大槻のもっともよい形だと思う。
メンバーに三柴“エディ”理がいるので、アレンジは安心。NARASAKI(guitar+作曲)と有松博(drums)というのはまったく知らない人だが、かなり上手い。リフの組み立て、ドラムフィル、どちらも素敵。
(−−ベースは、1stでは内田雄一郎が弾いているが、2ndでは脱退している。その後はサポートとして佐藤研二が入っている。…このひとってマルコシアス=バンプだっけ?)
1st album[爆誕]は、かの傑作[Sister Strawberry]に匹敵するほどの名作だと思う。演奏、楽曲、テンション、ストーリー関連、全体に質が高い。
楽曲に関しては、エディがいるのも成功要因の1つだと思うが、もっとも大きいのは《大槻が曲を書いていない》点にある気がする。曲の大半はNARASAKI氏が書き、残りを外部が書いている。ボーカルは基本的に叫びだが、たまに歌うメロも、曲のほうが歌い手の特性を理解して無理の無いように作られていると感じる。
ストーリーは、(2)[身代わりマリー]を中心とする。−−神によって「ある人の苦しみによって別の誰かが幸せになる」
と設定され、それを知ったマリーは自ら進んで身代わりになる。−−他の曲にも、関係あるような無いような思わせぶりな歌詞がちりばめられている。
物語は、事実上のアルバムラスト曲(11)[SM作家]にてループする。この歌では、恋人同士であるSMダンサーとSM作家が事件に巻き込まれる。作家は、いままでダンサーに迷惑をかけ続けたことを悔い、「人生に1度くらいは人の役に立ちたい」
と、ダンサーを逃がすために自ら死を選ぶ。その後、この作家の遺稿が[身代わりマリー]として出版され、この歌の中で大槻が内容を読み上げる。
しかけ自体はそれほど深いわけではないが、大槻の語りのパワーと、それを支える演奏の質によって、快感きわまる作品になっている。
コア=パンク色の強いアップ曲。意味もなく「猫!猫!猫!猫!(犬!犬!犬!犬!)」
と叫ぶ大槻は素敵だ。野太い声でレスポンスを返すバンドメンバーも大活躍。
演奏は、ベーとギターのリフがメインで、その上で大槻が叫びまくり、ドラムがフィルしまくる。ドラムフィル、特に猛烈に強く叩くハイハット(ライドか?)がカッコイイ。最初のブレイクのあとの金物の叩き方は最高!
間奏部分になると、唐突にギターが止み、エディのピアノがフィーチャーされる。分厚いマイナーコードでのパーカッシブな演奏(マタンゴの間奏を超えるか?)。−−8小節後にはギターが戻ってきて、低音でリフを再現する。このタイミングのテンションの高さは比類だ。
(初回プレス版には、(13)として[アベルカイン〜かわいいバージョン]が入っている。別にカワイイわけじゃなくて、アレンジは同じ方向だが、一部のみ歌詞が違う。こちらのバージョンの間奏部分での「あ〜やっぱり疲れる。一杯やろう…」
というサラリーマン歌詞は、いまやサラリーマンの身である私によく沁みる…)
リフがハードロックしているのを除くと、どことなくボウイ(日本のバンドのほう)みたいな響きを感じる。サビもメロディアスな強いロック。
…だから、全体としては大槻には全然あってないのだが、曲とアレンジが良いので乗り切れる。−−ボーカルには音程補正とか入れているのかな?
(余談)
ピアノの蓋を開ければすぐ分かることだが、実は弦は1種類ではない。私の家にあったアップライトの小さなものでも、低音と中音と高音の3種類がある。低音弦はベースギターよりも野太い一本弦(巻き)で、かなり強い箱鳴りノイズを巻き起こす。
エディは、この低音の響きの生かし方が上手い。
唯一の内田雄一郎作曲。ベースのフレーズを前面に押し出した5拍子Jazz風プログレ色ハードロック。ベース自体のフレーズも綺麗だが、これの上にエディが載せたピアノの不協和音のパーカッシブな使い方が非常に上手い。間奏部分のサックスやフルートも、楽しい演出だ。
(あ、この曲もメロディ難しいな。やはり大槻に音程補正か?)
この歌では、美少年で探偵でサディストな男が、とある女(マリー)を拷問に掛ける」。−−このキャラクターって、手塚キャラのロックだと思う。
超ハードロックバラード!
音楽は、Aメロ-サビの繰り返し。−−大槻がこんな綺麗なメロディを歌いこなせるとは思わなかった! 音程移動は少ないが、かなり泣けるフレーズになっている。
歌詞も泣ける。
少女は自殺を決意したが、飛び降りる寸前に友人に説得され、思いとどまる。しかし、その《思いとどまった》ことでさらに追い詰められ、「今度こそ」と屋上に上がる。
このつまらない自虐感を、ハードロックの持つ様式美とエディが持ち込むピアノフレーズで、耽美に秀麗に聞かせ切る。名演奏です。
インストゥルメンタル。A-B-A-B-B'の単純構成を基礎とする。
AとBの対比が美しいわけだが、それでもやはりAのリフを強く評価したい。この音を出せることこそがロックの素晴らしさだ。
唯一の大槻作曲。テレパシーで交信しあう恋人の歌。だがもちろん、それは男の勘違いなのだろう。
歌詞の断片化が好きだ。
ツー 2人は ツー 痛みも ツー 涙も ツー つながって
演奏は、ピアノの綺麗なマイナーコードを前面に出してバラードアレンジになっているが、ギターの激しいリズムカッティングを基調としたメタル。カッティングのミュートの味が大好き。
最後のループでは、ギターの音バンラスを低くして、唐突にシンセサイザーの白玉が入り込む。こういう展開は私のツボで、かなり涙できる。
断言できる。この楽曲は、規模こそ違えど、[いくぢなし]に匹敵する名演奏だ。
叩きまくるドラムソロから入って、イントロは5拍子のメタルリフ。
Aメロ部分は、見事な8beatのメタル。
(続くA'部分では、同じテンポでドラムが16を叩く。シャカシャカなりまくるハイハットがカッコイイが、生演奏だと1人では絶対叩けない。レコーディングでの最高演出だ。)
Bは小さなブリッジ。エディがオルガンにチェンジして、そのままサビになだれ込む。−−この部分は演奏的には普通。
A-A'-B-Cを2コーラス繰り返したあと、突然演奏は止み、ピアノのみが強烈なブロックコード中心のリフで6拍子を提示する。ここでSM作家は死に、その死後について大槻がモノローグする。
8小節後にドラムが入る。−−1でバスとオープンハイハットを強く叩く。その響きが非常に魅惑的。−−次の8小節ではベースが入り、大槻の喋りの熱が“うなされ状態”まで高まる。
感極まったところでギター乱入。たっぷり歪んだギターがゴリゴリとパワーカッティングのリフを提示し、演奏を締める。エンディングだ。バンドメンバー全員で叫ぶ。
wanna be your dog、wanna be your god!
この楽曲は、規模こそ違えど、[いくぢなし]に匹敵する名演奏だ。−−惜しむらくは1点のみ。このギター乱入によって、イントロと同様の5拍子になったほうがカッコよかったと感じる。
エディのピアノが暴れ、ドラムが暴れ、ギターとベーがリフを弾き、大槻が叫ぶ。それだけの曲。しかし、キレがよく、テンションが高く、技術の裏づけが高い。−−これこそが特撮のカッコよさのすべてだと断言していい。
(アベルカインとこの曲は、特撮というバンドのテーマ曲だと思う。本来は、全アルバムをこれらの楽曲で始め〜終わって欲しいくらいだ。)
2ndアルバム[ヌイグルマー]は、私はそれほど好きではない。演奏が悪いわけではないが、どうも悪い意味で似かよった曲が多く感じる。ストーリーも練られていない。
ひょっとして…大槻が歌ヘタなのを忘れて、メロを作り過ぎたのかも。−−バーバレラやトンネル=ラブなんか、歌が難しすぎだし、構成複雑すぎ。カッコイイけど、死んでいる。
通して好きなのは、[戦え! ヌイグルマー][爆弾ピエロ]かな。上の2曲は、パーツは好きだが、全体のバランスに難アリ。
X.Y.Z.→A。フーミンキツタカは今こんなことしてんのか。ニイハラ、ファンキー末吉、バーベキュー和佐田。メンバーめっちゃくちゃじゃん。ある意味すごい。ある意味デタラメ。というかデタラメ。
末吉のprofile、なんだこれ。
1990年に北京の地下クラブで偶然、当時「精神汚染音楽」として不自由な活動を余儀なくされていた中国ロックと出会い、「俺も中国人になる!」とその追っかけを嫁にし、家庭内言語を中国語で暮らす。
ほーじんはいま何してるんだろう…爆風銃といえば、ホッピー神山は生きてる? PINKのメンバーはそれぞれなにしてんの?
あー、ネタ違うけど、サエキケンゾウは? 鉄カブトの女は、いまでも俺を殴りにくる? うわーーーー懐かしー。
(余談:こんなマイナーなネタでも、それぞれ適切なサイトを見つけ出すgoogleはスゴイなあ。また、そういうサイトが存在するっつーことは、Internet利用は本当に裾野まで広がったんだな。感慨深し。)
(余談:googleといえば。昔、クリスマス=イブの間奏部分のバロック曲のタイトルを知りたくて、googleで「山下達郎 間奏」で検索したことがある。「クリスマス=イブ」とは入れていないのに、見事に[パッヘルベルのカノン]を検索しあてたよ。いろんな意味でスゴイ。)
Super Xevious(細野晴臣)復刻。6月20日発売とあるが、上位ページによると延期だそうな。くそー。オタな版元だって、Super Xeviousなら許すのに… 権利関係ってナニよ。またYENが問題おこしてんのか? それともNamcoか。
このあいだ偶然昔のテープが出てきまして、それに前半5分くらい入ってました。感涙。やはり私のテクノ=リファレンスだ。
81年作品。もともと実家にLPがあって(母の所有物)、よく聞いていた。他のアルバムを知らないのだが、これは傑作だと思う。歌詞もメロディも歌い方も演奏も、どこをわっても妖艶だ。
(補足:当時の陽水のインタビュー? googleで検索していたら出てきた。)
情熱のジルバ。
AメロもBメロ綺麗で、その2つの対比も非常に綺麗。なによりも歌詞が綺麗だ。「君に寄せる愛はジェラシー」
「ワンピースを重ね着する君の心は 不思議な世界をさまよいあるいていたんだ」
なんてセリフは、大人の詩人でないと思いつかない。むせ返るほどの深い色気だ。
アレンジも、スパニッシュなギターとピアノのリズムが中心で、贅沢に控えめにストリングスが入っている。間奏部分でシンセサイザーが猛烈に鳴る部分だけ、微妙にチンケ−−といってもフレーズが素晴らしいのでズっこけたりはしない。
3連の4拍子。マイナー基調の綺麗だけど不思議なメロディーと、独特の悲しい響きをもった空気感。このアルバム一番の傑作だと思う。
この曲の展開は非常にエッチだ。いやらしい。官能の極地。
Aメロでは、スネアを鳴らさずに前ビートで、メロをしっとりと聞かせる。動きの大きな綺麗なメロで、「君の恋など醒めたらしい 雨の上がったこの街」
という鋭い言葉を届ける。
Bメロではスネアがビートを動かす。歌も一転して(メロを捨てて)リズムに走る。2音程を8分で刻むだけのロックなフレーズを、陽水の2声のコーラスが響き良くぶつける。−−ギターが弾く対メロも素敵。
5小節目からタムのフィルでリズムをさらに圧迫し、6小節目でようやくメロが動いてフレーズを作る。6小節目4拍にてタイトルである「海はどうだ」
を届けたところで盛り上がりは絶頂に達し、演奏は完全に休止する。
7〜8小節目は、白玉シンセ=ストリングスが微小音からだんだんとグレッシェンドしてきて、余韻をかたどる。−−ひょっとするとギターのフィードバック音にコーラスを掛けたものかも。
−−上で紹介したサイトによると、陽水は詩人友部の歌詞「海はどうだ」
に衝撃を受けたようだ。このメロもアレンジも、この部分の衝撃を120%活かしている。胸が張り裂けるほどテンションがあがる。息を詰めて聞いてしまう。かっこいい。すばらしき職人の技だ。
間奏をはさんで3番までリフレインしたあと、スキャットによる後奏に入る。このスキャット(ウ ウーウ ウーウ オーオ!
)のフレーズも無類の美しさだ。
イントロとサビを兼ねているフレーズ(ヒュルル ヒュールルー
)が鮮烈ですなあ。このムーブメントが鮮烈だから、やはりAメロはドラムが休止しながら綺麗なメロディを聞かせるようにアレンシされている。
−−上記サイトによれば、この歌は森進一も歌ったようだ。たしかに演歌としてもアレンジしやすいようになっていると思うが、このアルバムのアレンジと陽水の声で届けられる限りは、カンタータとして協会で歌えるような美麗なアリアだ。
エレキギター中心で、ロックのパロディーみたいなアレンジになっている。歌詞もサイケデリックで、「俺はキャッチコピーだ」
「誰がミックジャガーだ」
などとなっている。
万が一陽水が歌っていなければ、非常に駄曲だと思う。ところが、陽水の歌唱力でやられると、強烈なロックへの当てこすりに聞こえる。この声で「これがロックビジネス」
とまで言われれば、恐れ入って感心するしかなくなってしまう。−−歌唱力はすべてを超える。
イントロの済んだアルペジオと高音ベース、その後のギター(2声でオーギュメントフレーズをハモっている)を聞いていると、非常にサイケ=プログレのような印象を受ける。
実際には、そのあと入ってくるのは、ボブ=ディランのようなフォークギターのカッティングと、それに乗るブルージーなギターソロ(これもフォークギターだ)。歌も、初期の陽水っぽいフォークだ。
アレンジが秀逸で、抑え目にラテン=パーカッションを使ったり、ブルースハープに対メロを入れさせたりして、フォークの泥臭さを感じさせなくしている。
歌詞も好き。−−一見幸せなのに、メロがすべて寂しげで、聞く心を複雑にさせる。
もうじき夏がくる 思い出つれてくる 浮きぶくろと貸し切りバスに乗って
夏にはふるさとが ひび我ふるさとが おまつりへと カネやタイコで誘う
B面1曲目は、非常に美麗なポップソング。綺麗にサスティンがかかったエレキギターのソロが(歪まずに)綺麗なフレーズを引き終わると、クリアーなフォークギターのカッティングだけの音場のうえで、陽水の声が2つ踊る。−−bmp120くらいの心地よい16beat。
青い星空までムスタングでゆくよ
君は悩ましげに道すがらを眠る
AメロBメロを経て、16小節目からバンドが入ってくる。この段階で、誰もが歌のとりこになっているはずだ。−−こまかいテクニックの解説はできるが、それをするのが野暮になるほど、説得力のある美麗なメロディと声。
そのままだよ、まだまだだよ、そっと
あの頃から、今までだよ、ずっと
秀逸なメロ、声、そして歌詞。これをハッピーに聞かなかったら、なんと不幸なことか。
サックス中心で、これまたロックなアレンジになっている。(4)はパロディ色が激しかったが、こちらはコード展開の妙を活かすためにブリバリ音な楽器が効果的だから取り入れたのだろう。
これのある意味官能の極地。
イントロはAm7(トニック)で普通の8beatを演奏している。
歌が始まるAメロ頭で突然ブレイクして、全員白玉演奏、しかもF7というハイテンション。それまでミはナチュラルだったのに、突然♭に。陽水は澄んだ声で的確にここを抑える。ところがサックスが中音域のファを白玉演奏してるので、テンションは極限まで跳ね上がる。
4小節で、メロは再びAm7の8beatに戻る。−−この開放による恍惚はすごいよ!
アルバムタイトル「あやしい夜をまって」は、この曲のフレーズから取っている。
Aメロは、シンセ中心のキテレツなアレンジが絶妙。
Aメロ自体が非常に大きなメロディで、2小節単位で細分化するならA-A-B-A'の展開を持っている。このB部分のムーブメントが大きくて、これだけで十分1曲になっている。
サビメロに入ると、雰囲気が一転する。
もちろん、サビ部分が終わると、ふたたびキテレツなシンセが帰ってくる。−−この対比の妙こそが、この楽曲の強みだ。
(余談:この曲のメインフレーズのシンセの音色は、平沢進[サイエンスの幽霊]にも入ってた。非常に郷愁を誘う物悲しい音色だ。)
スローテンポのフォーク。シナトラ風。とくに語る部分はないが、もちろん美麗だ。
スローテンポの美麗な16beat。ブラッシング(かシェーカー)による柔らかな16の提示と、シロフォンによる対メロディの響きで、ほどほどに南国感を演出している。歌メロからもゆったりとしたリラックスムードが漂う。
歌詞も甘い。というか、甘すぎる。作詞を見たら松本隆だった。−−歌詞カードに英語spellが出てきるけど、陽水は日本語発音で歌っている。その違和感で「これは他人作詞だな」とまざまざと感じる。
とはいえ。やっぱ綺麗だなあ。
(録音としてはトラック10のお尻)
ピアノと陽水の声1本だけによる小曲。ノン=エフェクトなので、さらに声の綺麗さを確認できる。
(アルバム内では、適度なリバーブとコーラスでいじってある)。
(注:ネガティブ文章であることを始めに告白します)
私を直接知っている人ならば90%が一笑に付すだろうが、実は私は自分がミスチルを好きなのではないかと感じていた。TVやラジオでサビ部分しか聞いたことがなかったが、シーソーゲームでコステロ賛歌ともとれる傾倒ぶりを知り、そのあとずっと気になっていたのだ。友人宅でみたTVドラマの主題歌[名も無い詩]は全体して好きだったし、各新曲のサビも嫌いではなかった。何を言うにも、ボーカル桜井の声の伸びのよさにあこがれていた。
さいきんようやくbest版が発売されたので、店頭で試聴してみた。bestは2つで、[〜1995]と[1996〜]だ(1年ズレてるかも)。
これで分かった。私はこれっぽっちもミスチルを好きじゃない。メロの展開、アレンジ、録音状態、すべてにおいて趣味じゃない。唯一の例外が[名も無い詩]の冒頭部分で、次の歌詞に対するメロの乗せ方・巻き舌を好きだ。ドラムがノーマル8beatじゃなくてタムフィル中心なのも、好み感を演出している。
すこしぐらいの汚れものなら 僕が全部平らげてやる Oh, dearling!
−−サビ部分のメロの響きも好きなほうだが、ギターアレンジやストリングスの入り方が気に入らないので、曲全体には賛成できない。
(注:ただし、視聴した新宿virgin mega storeのシステムは、かの新宿tower recordよりもさらに音が悪かったことを付け加えておく。)
他の曲でも、共感できるのはサビメロでの声の使い方くらいで、全体を好きになれる演奏は1つもない。
呪縛が解けた。喜ばしいことだ。−−私を知っている人の95%はこの感想に納得するだろうし、これを知って怒る人は私には合っていないと断言できる。
このすがすがしさは、モリッシーおよびroxy musicを聞いて趣味で無いと悟ったとき以来のものだ。
(余談)
昔、加藤和彦がインタビューで言っていた。
ストーンズを好きになれないヒトとは、僕は友達になれない。
ありがとう、私はあなたとは友達になれません。
テルミン博士が唯一認めたテルミン奏者。恋人でもあったが、そういう脇の話はおいておいて。
演奏は、ピアノとテルミンのみ。楽曲は、クラシックからモダンまでの小曲。サン=サーンスの[白鳥]やストラビンスキーの[火の鳥の子守唄]など。
ブットびました。テルミンってこんなに綺麗な音色になるものなんですね! 理想的なソプラノとフルートを足したような色で、非常に細かく複雑なビフラートと微妙な音程変化によって、多彩な感情表現がなされている。強弱変化も自在だし、ポルタメントからスタッカートまで適切にこなす。
−−考えてみれば、人間の体を使って三次元コントロールするわけですから、非常に微妙な変化を指示できるのは当然。逆に、これだと難しすぎるから、ヘタクソが適当に触ると「ミュィーーーン!」っつうありがちな効果音にしかならない。なるほど。非常に納得できた。
私はこのCDで、かなり理想的な[白鳥]の演奏を聞いた。−−他の曲は、まあなんというかイマイチだったが。
(視聴のみ、購買せず@新宿タワーレコード)
なぜそんなものを視聴できたかといえば、映画をやるからだ。テルミン博士の生涯と楽器テルミンを記した映画。それの宣伝として、視聴機が置いてあった。
レーニンが、スターリンが、チャップリンが、アインシュタインが、レッド=ツェッペリンが、ビーチ=ボーイズが、ヒッチコックが、エド=ウッドが、ハンニバル=レクターが、その音色に魅せられた! 触れずにして美しい音色を奏でる、世界初の電子楽器“テルミン”。それを発明した「知られざる天才奇人」テルミン博士の、想像を絶する人生と、運命の恋人クララとの時を越えた感動の再開! ついに奇跡のロマンが蘇る!
(追記:8月17日)
実は映画館に2度足を運んだ。満席で入れなかったのだ。どの回も8割は埋まっているようだ(100人定員)。カルト映画だと思っていたんだが、この人気はなぜだ?
内容は、まあ本道のドキュメンタリー映画。インタビューと資料映像と演奏を織り交ぜながら、楽器テルミンおよび博士のアメリカでの活躍、発明心、ソ連による拉致、そして再開を語る。興味の無いひとにはちっとも面白くない映画だろう。正直私は7割退屈だった。
私が感心した点をあげる。
新宿タワーにて発見したのだが、頭脳警察の1が出ている。ずっと発禁だったのに。
ふと気が付くと、エレカシの1stもCDになっている。これはなぜずっとLPのみだったのだろう。
なぜか突然ダンボールのアルバムがいくつかCDになっている。たまの石川さん(パーカッション)が参加したアルバムが3枚もあるし、解説をKERAが書いている。なんだこりゃ。−−いま誰が突然ダンボールを欲しがるというのか。俺か???
その脇には、戸川純のベストも。
有頂天[ピース]は、なんとサシではなくてヒラ置き(ジャケットが見えるように置き)でした。[タワレコが選ぶ! いつでも買える名盤100]だそうです。−−意味不明! −−でも、ピース買ってきました。泣けるぜBYE-BYE。
−−新宿タワーはどうかしてしまったんだろうか。俺なんかに受けるセンスでやっていては、一般客は戸惑うばかりでは?
帰りの電車でみたのだが、8月1日日付のASAHIパソコンの表紙がbeatnik(鈴木慶一+高橋幸弘)だ。再結成??? どうでもいいが、2人とも汚いオッサンだ。老けたなあ…
知り合いに教えてもらった。グニュー=ツールスというバンドがあるらしい。
spellはgnu toolsではないのだが。
殿下マニア掲示板で知った情報。噂。
先週くらいにシーラEが青山ブルーノートでliveしてまして、その際の噂。
バンドメンバーの中には、PrinceとシーラEがいっしょにやっていたときの メンバーが数人いたそうな。
で、客席にミッチー及川氏がいて、 アンコール時にミッチーが客を巻き込みながら Princeの客を歌いまくり、バンドに演奏をせがんだそうです。 シーラEとエリック=リーズが喜んで、boy and girlが演奏されたらしい。
いい話だ。
jazz guitarの大御所wesの代表作。−−表記として、ウェズだったかウェスだったか、自信が無い。
写真が無いので何を弾いているのか分からないが、彼のギターの音はガットっぽい丸い音で、でもサスティンは十分ある。音自体が甘味のある切ない音だが、さらにフレージングにおいてハーモニーやオクターブ=ユニゾンを効果的に配置するため、全体に色気がたっぷりだ。
(−−この奏法は、[オクターブ奏法]と称される。指運に限界が出やすかったりフレーズが遅くなったりしそうだが、聞けばハンディキャップは感じない。伊達に一流じゃない−−当然か。)
バンドはDr+Bass+Guitarのコンボだが、ほとんどの曲でバッキングとしてパーカッション・ビフラフォン(あるいはピアノ)が追加される。必要に応じて、盛り上げどころに効果的にホーンセクションやストリングスが入り込む。かなり贅沢な演奏だ。
オスカーピーターソンに慣れた人間としての先入観で、「ギターの3コンボだと、バッキングの音がスカスカではないか?」と考えていた。実際に聞いてみると、的確なハーモニーを抑えたwesのギターと、綺麗に展開するベースによって、問題なく分厚く聞こえる。さらにwesはメロの開き部分でコードカッティングを挟み込むので、和音感は十分。−−最初から最後まで3コンボだとキツイだろうが、少なくともレコーディング版では贅沢にオーケストラが挿入されることもあり、心配は完全に杞憂に終わった。
1曲目(表題曲)がヘンにアップテンポで気に入らないが、他の曲は全体に満足できる。このギターの音色にはメロウ系が一番合うと思うが、多少ハイテンポにボサをやっても違和感はない。
どれもこれもカッコイイが、あえて取り上げるならコレだろう。
ゆったりswingのブルース。テーマ部分では、ノーマルなブルースのI-I-VI-Iの展開のあと、ギターのカッティングを活かしたフィルっぽいフレーズで複雑な展開をまわす。すごくmodernちっく。
演奏は、ピアノとラテンパーカスを足したコンボ。ピアノが(抑え目ながら)的確に和音ブロックを出したうえで、wesが気持ちよくフレーズを弾く。前述のとおり、wesはフレーズの開き部分にカッティングを入れるのだが、このアタック加減も気持ちよい。
テーマを2ループの後、wesのソロが4ループ続く。それぞれ特徴のあるフレージングなのだが、とくに4ループ目のカッティングを前面に押し出した展開が印象的だ。
その後、wesがバックに回って、ピアノがソロを。4ループ。wesの滑らかな白玉カッティングが非常にカッコイイ。やはり4ループ目にブロックコードによる展開を入れてくる。
この次に、突如として現れるホーンセクション。4ホーンでテーマのバリエーションを演奏し、例のフィルっぽいブレイクをブリバリと提示する。ここで再度基本コンボに戻り、ブレイクからテーマを再現。エンディングへとなだれ込む。
−−modern swingの最高峰といっていい演奏だ。
CDでは1テイク追加されている。それがゆったりswingのテイク。もともとリリースされていたのは、ボサっぽいテイクだ(細かい16)。
バンドは、3+ビフラフォン+パーカス。ビフラフォンが和音の空気を支配したうえで、wesがフレーズを繰り広げる(ソロを弾くのはwesのみ)。swingのテイクのほうが、テーマ部分のカッティングの活かしかたが秀逸。
この曲では、アドリブのループごとに半音ずつ転調する。最初のトニックはCm。これでテーマを2度提示したあと、ループごとに半音ずつトニックを上げていく。この転調部分でwesが提示するフレーズがとても不思議な配置で、カッコよすぎて感涙して脳が止まります。−−手元に楽器が無いので音を取れません。残念。−−4ループさせてEmになったら、終わり。
他にも、(3)oh you crazy moonとか(5)without youなぞ、ムードたっぷりのスローテンポ曲がお気に入り。このギターは心酔する。
(追記2001年1月13日)
その後2作を追加で聞いたが、気に入らない。
カバーアルバム[united cover]よりシングルカット。オリジナルはタイガースの傑作。
ロマンチックなメロディが特徴の曲なので、それを極力生かしている。ドラムなどのパーカッション演奏はなく、ハープのアルペジオとストリングスの白玉のみというシンプルな演奏。このうえで、陽水の声が妖艶に歌い上げる。−−本能で泣ける。
(アルバム全体に楽曲セレクトのセンスが面白い。コーヒー=ルンバ、嵐を呼ぶ男、銀座カンカン娘、など。でも、視聴した結果、演奏が好きじゃなかったので、シングルのみ購買。)
それにしても。歌詞が意味わからん。「幻想的で美しい」と評価してもいいのかもしれないが、私にとってはプログレだ。
野辺で少女が花飾りを作っている。それを私にかけて欲しい。ふと見ると、少女は白鳥になっていた。白鳥は「私の首に、花の首飾りを」と泣きながらいう。かけてあげると、少女に戻った。
もともと陽水は圧倒的に声がよいので、それこそただ“いろはにほへと”
というだけでも、あるいはソバ屋のメニューを読むだけでも、作品になってしまうと思う。怖い才能だ。
−−なお、上記の褒めかたは、もともとはシドニー=シェルダンを褒めるために誰かが考えたんだったと思う。「喫茶店のメニューを読むだけでも」だったかな?
実は1枚も持っていない。最近では、奥田民生とやった[ありがとう]のハーモニーワークには痛く感動しているが、でも購入はしていない。
実家には、母親が買ったLPとして、[あやしい夜をまって]がある。演奏も趣味が合い、全体に好きだ。
(そういえば、ジェラシーも歌詞はプログレだなあ。浜百合が咲いていて、あのこはワンピースを重ね着している。君に寄せる愛はジェラシー。)
他には、親父が昔に取ったらしきカセットテープが。[氷の世界][傘が無い(君に逢いに行かなくちゃ)][人生が二度あれば](あれ、同じ曲か?)などを覚えている。
当時、中学の授業ではギターで適当に弾かされていたし、 それに斎藤由貴がカバーしていたので曲は知っていた。 単純なC-Am-D7-G進行のつまらない曲だと思っていた。 ギターでジャカジャカ弾けばいい曲だと思っていた。
ところがオリジナルを聞いてみると、
ギターとピアノで大変綺麗なリズムを作っている。
イントロの「探しものはなんですか」
の直後の
ジャジャッジャーーン
というリズムのシンコペーション表現に
しびれた。衝撃的だった。陽水の声の抜け具合にもしびれた。
このころようやく《作品の美しさ》は「その実際の演奏と録音だけが支配する」と 理解できるようになった。
[夢の中へ]のオリジナルは、「探しものはなんですか」
のあとの演奏リズムのシンコペ加減が非常にカッコよくて、かなりビックリした。アイドルがやったカバー版によるイメージとは、あまりにも世界が違いすぎる。
−−どれもこれも買ってもいいんだが、他にも欲しいものはたくさんあるからなあ。ごめんなさい。