詳細版:いっかくはぢめ作品紹介

簡易版を基本とします。詳細版では、技術解説や録音時の思い出話が含まれます。


不完全な虚構

1993年4月。

《曲目》 涙と密室/愛と天国/才能と限界

download:歌詞全mp3+アウトテイク

この数作の《個性の無さ》を吹き飛ばすために、ためにためて作った密室ソング。プリンスなビート、美しくスリリングな不協和音など、現在のいっかくはぢめの原形となった楽曲集。

涙と密室

ミドルテンポの16。

ハイハットを、非常に細かいベロシティ変化を付けて16鳴らし、うねる16beatを作りこれを2小節ループさせる。スネアは鳴らさないで、リム=ショットを4のみ叩く。SlapBassの音色の高い音(実際には出ない音)の発振部分を使って、2小節目の3.5拍に怪しいパーカッシブ音を鳴らす。

この2小節ループを基調とし、4小節おきの頭で一度だけシンバルが鳴る。8小節のお尻にだけ7thのストリングスが入る。他のフィルは入れない。−−Princeスタイルのストイックなループの完成。

ベースはSlapBase音色なのだが、2小節の頭で4回16分、鳴らないはずの低音を鳴らすだけ(ピアノの低音弦のような唸りだけが鳴る)。左右には、エレピを使ったミニマルな1小節ループを入れた。これもb♭やc#を押さえるばかりの不条理音になっている。

トニックはCなのだが、ボーカル=メロディはつねにb♭に帰結するようにしてある。3度はまったく入れずに無調感を演出。

これら全体によって、ふわふわした感じの異型ファンク=Prince音楽の出来上がり。

−−これで声さえ良かったら、ほんとうに傑作だと思うが。唄がイマイチすぎ。

愛と天国

ミドルテンポの16のうえに、フィルで32音符をたくさん入れた。非常に細かい謎のハイハットでリズムはグシャグシャに乱れてゆく。

演奏は、マイナー1コード反復。ベースはファンクチューンだが、エレピとマリンバがプログレ風味の味付けを入れる。曲展開に合わせて、ストリングスがテンション音やカウンター=メロディなどを入れる。

−−これで歌さえ上手かったら(以下略)

才能と限界

ピアノとストリングスによる綺麗な音楽。演奏もメロディーも非常に綺麗だ。とくにBメロにおける5度短調からの半音降下の展開は素敵。−−ドラムパターンには、Princeを意識したシェーカーのフィルが入っている(forever, forever)。

照れ隠しなのか、始めと終わりには無限上昇音によるテクノなループが入れられている。それがまたカッコいい。

テープを漁っていたら、アウトテイクが出てきたので、それもmp3化して公開します。

intro[circus]

アコーディオン音色+早回しボーカル2本で、サーカスの呼子音楽をイメージ。テンポをふんだんに緩急つけて演奏。QY-10にはテンポトラックがないので、録音時に手動で指定した。なつかしい。

狂気あふれるボーカルで、それでいてかわいくて、お気に入り。

alphabet st.

Princeの同名曲からサビだけ引用した。ボーカルの執拗な多重録音の実験。

テープにミックスダウンが残っていたのは偶然で、後半は途切れてしまっている。残念。

23pre【不完全な虚構】の音作りは、隙間とミニマルと不協和音を突き詰めた、自分の境地です。

いまは機械の性能が上がってしまって、こういう工夫をしなくなりました。その分 演奏に集中できるわけですが、なんというか テンションが違ってしまったとは思います。この独特の音作りは 再現できません。


第23作品集【不完全な虚構】

1993年10月。

《曲目》 欲望と狂気/崇拝と幻想/こわれもの/願望と狂気/不成立音楽

download:歌詞全mp3

苦心の末完成した、これぞいっかくはぢめミュージック。内容的には、アルバムタイトルの示すとおり、前シングルを推し進めたものだが、演奏も歌も洗練度が上がっている。

1曲目と4曲目は同じ歌詞を、前者はテクノ風ファンクに、後者は重苦しい宗教音楽に仕上げている。2曲目はプリンスに捧げる奇形冷徹音楽。3曲目はプログレ・ハードロック風の派手でクールなオケに支えられた楽曲で、「自分の野辺送りの風景を見下ろして語る」部分と「世界への呪詛を撒き散らす」部分に別れる。前述の宗教音楽を経て、ラストは「不成立音楽」。ミニマル風の妖しい鈴の音が、微妙に展開しながら「家具の音楽」を織り成すなか、かすかにきこえる「この音楽は成立しない」という声。

個々の曲、全体の流れ、ともによく出来ている。

欲望と狂気

23miniの[涙と密室]を下地とした改良作。

bpm130くらいの16beat。スネアを避けてリム=ショットだけにしたり、また小節頭にバスを配置しなかったり、思わぬ箇所でハンドクラップのディレイが鳴ったりと、Prince風なリズムを追求している。

ベースはSlapの音色。ループの1小節目の前半のみファンキーに重たい色を出すが、あとは発振音を出させてパーカッシブに使う。

左右には、mute guitarという音色を半小節のミニマルループとして回している。トニックはC7なのだが、このループがb♭-aを鳴らして、C7よりも和音感を広げてある。

展開は、A-B-A-B-ソロ-A'-B。すべて同じループだが、Bではストリングスが白玉系で7thから半音ずつ下がって入る。−−これにより和音テンションが上がる。−−2度目のA以降は、ループの1小節目の2にてサックスが7thを入れる。これにて分散しすぎないように絞める。


(余談)

−−実はこの曲は、他の曲を完成させたあとに時間バランスが悪いことが分かり、急遽付け加えた。そのために、23miniのあからさまな焼き直しになっているうえに、メロや歌詞が4曲目と同じだ。

そういう誤魔化しでつくった曲なのだが、逆に全体の統一性を醸し出している(ような気になる)から不思議だ。


崇拝と幻想

QY-10のドラムの音色のうち、アゴゴのLとHと同時に鳴らしたら、とてもヌケのよい音になった。これをラテン調に配置して2小節ループをつくった。

−−アゴゴが主体のため、スネアもリム=ショットもグルーヴを殺してしまう。試行錯誤の結果オープン=ハイハットを入れることにした。1小節目の3と、2小節目の3と3.5に。これによって、あたかも半分のテンポのループが入っているかのようなグルーヴを確保できた。−−録音時に思いつき、3の位置で呼吸音を足すことにした。もちろん、YMOの[key]を意識している。

リズムの流れが気持ちいいので、「ベースは極力シンプルに」をモットーに、moogモドキ音色で[c... ...b♭ .... ....]と押さえたフレーズにした。ベードラとのシンクロがよく、とてもファンキーだ。

左右には、エレピによる半小節ループと1/4小節ループの2つを同時に回している。[.ab♭c-]と[..cg b♭ab♭c]。単純な割にはトリップ感が高い。

イントロと感想のキャッチ部分は、普通のベースの音色で、a-b♭を無秩序にかき鳴らした。これがけっこうクール。脳みそを掻きまわされる感触が気持ちいい。

あまりのあまりさ加減のため、曲も歌詞もPrinceに捧げることにした。

こわれもの

筋肉少女帯の[いくぢなし]を意識したモノローグ曲。プログレ+ハードロック調のベースフレーズとドラムパターン。「自分の野辺送りの風景を見下ろして語る」部分(Bメロ)と「世界への呪詛を撒き散らす」部分(Aメロ)に別れる。

リズムパターンに、ちょっとした仕掛けを入れた。A(1)では、ハイテンポの3連の4分=12分で、普通に2と4にスネアが鳴る。ところがA(2)では、これを展開して2小節(24分)をワンループとし、3連符を普通の4連とカウントしてスネアをずらし、結果として16+8であるかのように演奏。−−ビートの細かさは一定なのだが、四分音符ベースで見ればテンポが変更されたことになる。おもしろいギミックだと思う。

Aメロでは、4重くらいの重ね録りで、「人を殺せ」「僕を殺せ」などと叫びまくっている。お経に良くある無音階一定リズムのラップだ。−−これの録音の最中は、近所から110番通報されるんじゃないかと心配だった。

願望と狂気

ローテンポの重たい曲。ベースとストリングスの白玉だけで音楽が進む。Cm7−C#6という不安定な進行を強引に進める。

目指したのは、黒魔術の香りがするような宗教歌。Cm7でもC#6でも、b♭を基調にメロディを構成する。−−メロディは[欲望と狂気]と同一だ。あちらがテクノ調であり、こちらはプログレ調。

ボーカルは、進行するほど増えていく。最後は8声くらい重ねた。−−ここまでくると、音の響きのテンション自体が心地よく、それだけで楽曲が出来上がったような気がしてしまう。

不成立音楽

これは実にいいかげんな楽曲なのだが、非常にテンションが高い。20thのS.O.S.に匹敵するほど、偶然による名作。

打ち込み時は…

  1. まず、bpmを80くらいにして、シーケンサーのリアルタイムレコーディングで、かなり適当に音を重ねた。2小節を延々とループさせ、音が半音で当たろうがなんだろうと音を増やす。《近いけど異なるタイミング》で音がたくさん鳴るようにする。

  2. 適当に入れたので当然だが、ループの頭がMIDI上の小節の頭とは一致しない。よーく聞き込んだうえで「ここを頭にするのがよい」という箇所を探し、そこにバスドラとベースを入れる。−−ベースはmoogを選んだが、これまた音程発生音よりも2オクターブ低くした音にして、ただの唸りを再生させるようにした。

  3. 次に、QY-10のコード展開機能によって、和音を展開させる。本来はC7などで入れたハーモニーをCaugやCdimやC6などに展開させる機能だが、このループは適当に音を入れただけだから、指定したコードになるわけではない。こちらの意図しない部分の音配置が変更され、よりトリップ感が増す。−−用意されている展開のなかから、脳裏が焦げるような展開をしたものだけをより分ける。

  4. それをどういう順序で聞かすと気持ちよいかを検討し、つなげて楽曲とする。

録音後は…

  1. MTRに録音したあと、それだけでは寂しいのでモノローグを語る。とくに新たに語るべきことを思いつかなかったので、このアルバムのほかの曲の歌詞を喋った。もともと英語なのだが、適当に日本語訳した。−−モノローグは2重に入れた。タイミングが適度にズレて入っているため、これまたトリップ感あふれる。

  2. 8小節おきくらいに、この楽曲のためのセリフ「この音楽は成立しない」を入れる。この時点でかなりのトランス感をgetできた。

  3. しかし、なんとなく空気感が足りなくて寂しい。そこで、マイクに向かって唸ってみた。自分が出せる音よりも1オクターブ上をガナる。声にはならないが、高音成分が出ているはずだ。この声にディストーションを掛けてみると、予想しなかったくらいにクリアーに超高音が出ている。もちろん、音程はまったく制御できない。だからこそトランス感がある。−−さらにショートディレイを掛けたうえで、全編に録音。プログレ屋がフィードバックのキターでやるようなことを、私は音声でやってみたわけだ。

−−こんなふうにして、トランス音楽ができあがった。


paintyourheartpink

1993年12月。

《曲目》 About You/Love Again/O.K./Be Together

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クリスマスを意識して、「それっぽい曲の一節をもじって曲を完成させよう!」と作りはじめた作品。

About You

love me tender]の2小節を間奏に利用した、ソウル系ハーモニーソング。スモーキー=ロビンソン風。トニックGで、GM7-Am7という綺麗な展開をする。

名曲なんですが、私が歌ヘタクソだったので、台無しになりました。

Love Again

テクノアレンジのプリンス系ソング、というか岡村靖幸チック。[あわてんぼうのサンタクロース]の2小節を細切れに(効果音として)配置した。

名曲なんですが(略)。

O.K.

ヘビメタっす。ボーカルにディストーション掛け捲って吼えてます。カッコイイ! イントロと間奏では、ベル音による[もろびとこぞりて]を配置。この落差もカッコイイ! −−これをさらに発展させて、l.o.v.eで[このままでいいや]にしました。

余談だが、[もろびてこぞりて]のタイトルは、ラテン語かなにかで[シュワキマセリ]なのだと思っていた。

Be Together

ジングルベル]のメロディー8小節をもとにループを作った。マリンバとストリングスを綺麗に響かせつつ、さらに王道ソウルっぽいサックスフレーズをテーマおよびカウンターメロディとして配置。

ボーカル=メロは、カーティス=メイフィールドもビックリするほど甘ったるいメロウソウルにした。−−だが、私の声では歌いこなせなかった。


ballet

1994年2月。

《曲目》 #1/#2/#3

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この頃、衝撃的な出会いがあった−−Zappaを初めて聞いた。

この作品は、Zappaへのあこがれがそのまま出た作品であり、今のところ、複雑さという面において[いっかくはぢめ]の最高傑作である。

歌詞のほとんどは、当時持っていた英語で書かれた英国史からの無断借用。一部のみ自分で作成した。

#1

複層構造のコラージュ音楽。−−この楽曲では、ループでつくったのはドラムとベースだけで、ほぼすべてのオケを専用に打ち込んだ。

イントロでは、マリンバとドラムのユニゾンで16分音符が4連奏される。4つ音が鳴ったあとは、しばらくの無音(15/16ちう微妙な静止音だったと思う)。この無音のあいだに、モノローグで自己否定を語る。−−くらーい暗い音楽だ。

続いて第1メロディーとして現れるのは、ローテンポの16によるサイケ=プログレ風ファンク。ストリングスとマリンバが絡み合いながらテーマを演奏する。ボーカルが入った後も、この2者が交代しながらカウンターメロディを彩る。

このあと唐突に7拍子のモノローグが入る。−−この部分では複数のメロディが絡み合っているのだが、音が悪くて聞き取れない…その後、第1メロ再現のドラムソロのあと、イントロ再現を行う。

第2陣として現れるメロディーは、マイナーチューンのswing系音楽。モノローグ→歌→演奏ソロと続いて展開する。

ブリッジとして、第1メロ時に7拍子で入れたものを再現する(今度は16に展開した)。ブリッジだから、すぐ消える。

第3メロとして、サイケ=プログレ風のモヤモヤしたループに入る。3連と4連の2つの分散和音が同時に鳴っていて、脳裏をグチャグチャにする。

イントロが再現されたあと、エンディングの4重コーラスに突入して終わる。なぜかエンディングだけウェストコースト調。

−−歌も、基礎演奏も、メロディ演奏も、対メロディ演奏も、ありとあらゆる部分が密であり、充実している。本人でも信じられないほどの高みがここにある。なにかに乗っ取られていたとしか考えられない。

#2

ミドルテンポの3連16部。本人はブルースで、ファンクで、しかもレッドツェッペリンなんだと思っている。

メロディも歌詞も、何も考えないまま録音した。そのため、「らっちゃり らっちゃる ぐちょっちゃー」などという下品なスキャットになっている(涙)。

#3

7拍子のインストプログレ。このうえに、いくつかのモノローグと、23thの[不成立音楽]同様のボーカルノイズが入っている。


L.O.V.E

1994年5月。

《曲目》 このままでいいや/何も知らない/うまくいえないよ/6月に出会ってから

download:歌詞全mp3

サカナを食べる猫がジャケット。そういうアイのうた。手書き歌詞カードがカワイイ

非常に有頂天を意識している。

このままでいいや

メイン(AメロBメロ)がヘビメタ+パンク。サビ(Cメロ)のみポップ。この元気さ加減は、まさに有頂天だ。

AとBは転拍子というかフィル埋め込み。Aは16+8。Bは16+(8+7)。非常に「なんだそりゃ」な割付だが、イキオイで乗り切っている。

イントロと中間は、5拍子のブレイクにしてある。お経を意識したゴリゴリの低音ユニゾンリズムで攻める。

エンディングは全音階5音スケールを半音転調しながら3回提示する。テンション高くて非常にカッコイイと思う。

何も知らない

3連ポップス。適当に手を抜くと、いつでもこういう楽曲になってしまう。普段は捨てるんだが、今回はオケを非常に凝って作りこみ、記念に1つ録音した。

サックスによるカウンターメロ、ストリングスによる空気感確保が綺麗。間奏部分でのシンセ+フルートの独奏も、個人的には好きだ。

うまくいえないよ

Aメロは10拍子のファンク風。Bメロは7+6=13による謎のニューウェイブ。Cメロ(サビ)は唐突なハイテンポ16ポップ。

非常にアクの強い演奏とメロディだが、パワーとイキオイでポップに聞かせる。我ながら[有頂天の子供]だと思う。とくにベースフレーズを聞いていると、その思いは強くなる。

6月に出会ってから

ポップス。メロディーの最初の2小節は、すかんち の[恋のミリオンダラー男]からいただいている。

演奏は、ストリングスだけで丁寧に組み上げた。とくにBメロの分散和音とブロック和音の掛け合いは最高だと思う。

エンディングでは、Bメロのループをおかしなコード展開でクラッシュさせている。数もおかしく、半小節*2、3拍*2、2拍*2、1拍*5(1拍ごとに半音ずつ上昇移調)だ。ここもテンション高くてカッコイイよー。


Lovely Heart of MELODY

1994年9月。

《曲目》 /Lovely Heart of MELODY/noises variation

5拍子を基本とした、モーツァルト風インストゥルメンタル。Zappaを意識しているためか、その曲中にjazzっぽい展開も入れ込んである。

ヴァリエーションは、ミニマル・テクノ風音楽をアコースティックな音色でやった。

それほど胸を張れる作品ではないが、可愛らしい作品だ。


nene the funny cat

1994年10月。

《曲目》 nene the funny cat/testament

download:歌詞全mp3

nene the funny cat

既にお家芸になった感のある5拍子POP。neneとはこのネコの名前であり、クレヨンしんちゃんに出てくるネネちゃんであり、大塚ねねである。いや、そんなことはどうでもいい。

イントロでは、童謡+プログレなフレーズを、ハイテンポに、かつ2オクターブに渡って展開する。これにボーカルを乗せたのだから、俺も偉いと思う。

Aメロには、メロディ展開に実験がある。

−−実験そのものは成功だが、造ったメロディが演奏向きであり、歌向きではなかったためか、歌詞の乗り方が出鱈目で、聞きにくい作品になってしまった。

そのAメロをひとしきり展開したあとは、Bメロとして間奏っぽいものに入る。Aが細かく3+2で展開していたので、Bは5+5でゆったりさせた。メロディとしてはBのほうが綺麗だ。

testament

testamentの方は、単純にプリンスやスライにぞっこんのファンクPOP。

実は、balletの頃のボツ曲を歌い直したもの。だから、歌詞にballetや23thなどとの共通部分がある。結構よく出来た作品として生まれ変わった。


ピーターパン

1994年12月。

《曲目》 #1/#2

download:歌詞mp3 #1

いっかくはぢめ史上もっとも悲惨でグロテスクな曲。現実から逃げ出す自分に向かって、「ピーターパン、死んじゃえ」と叫ぶ。−−このころ執拗に歌いたかったテーマは「人殺しの歌」と「ときのはな」。

この演奏は、昔にmooovement/oldffashionとしてリリースしたものと同一。そのときはまったく別の歌を載せていた。

#1

グログロなテクノ=トランス。リードシンセとベースが同じフレーズを(オクターブ違いで)ユニゾンしている。[cbca♭gcf#g]という半小節ループ(最初のcのみ上オクターブ)が基調。激しく音階移動するうえに半音が重なって、単音単フレーズであるにもかかわらず、複音複フレーズに聞こえる(XEVIOUSのBGMと同様の効果だ)。−−この基本フレーズを、2小節おきに4回変化させる(トニックはCのまま)。具体的なコード展開は忘れてしまったが、CM7-C7-Cadd9-C13/6かな?

ドラムは、808サンプリングのシンセスネアとシンセバスを使っている。バスは単純な4打ち。スネアは、ベロシティ40くらいの弱音でハイハットの代わりに16分すべてで鳴らす−−強くする部分だけベロシティを上げる。意外にグルーヴィーだ。−−これが基本だが、後半ほどだんだんと参加するドラムパターンを増やしていく。

このドラム+ベースを基調ループに用いて、さらにウワモノとして、QY-10でできる限りのフィルを入れている。ドラムだけでなく、発振させられる音色はとことんまで使った(サックスとオルガンがよい具合に発振する)。

ボーカルは、前半は語りや呟きだが、だんだんと絶叫へと移り変わっていく。−−マイク設定で、少しでも叫んだらクリッピングするようにして録音した。結果、シャウト部分の高音成分がすべて割れ、非常にヒステリックなテンションを得た。

サビの「ピーターパン! ピーターパン! ピーターパン! 死んじゃえ。」の叫び具合は、自分で感心するほど狂気だ。オーラス直前の「これは恋じゃない、違う!」に至っては、私の狂気の中でも最高峰だと思う。

*#2*

#2はスローテンポのヘビメタテクノ。#1のアクの強さに比べると、聞き所が無い。



Family to Love-愛と家族-

1995年8月。

《曲目》 intro-#1/#2/#3/outro-#4

download:歌詞全mp3

久々に作品を出した。原題と邦題がつりあわないところがイカシてると思う。とりあえず、《人殺しの歌》に関しては、一応の完結を見たといってよいだろう。

このシリーズでは、全曲まったく同じ歌詞だ。それを、まったく違うメロディと編曲でお届けしている。#2がずば抜けて出来がいい。#1はピーターパンの焼き直しになってしまった。

歌詞は、《人殺し》のシーンと《告白》のシーンに分かれる。自分としては、性格の異なる2つの歌詞を同じメロディに乗せる実験のつもりだった。しかし、結果品を今聞けば、「恋が適わなかったから、自分の手で殺した」ようにしか聞こえない。−−意図とは違うんだが、まあいいや。

intro〜#1

ピアノによる簡易なイントロ。バロック短調なイメージで作ったフレーズの脇で、パロディみたいな分散和音がポコポコと鳴る。この分散和音は、そのまま#1でも鳴っている。

#1は、タイプとしてはpeterpan#1だ。焼き直しと言ってもいい。

ミドルテンポの16beatによる重たいベースの2小節ループ。ドラムは2パターン用意されていて、(1)クローズ=ハイハットが3連を刻むものと、(2)オープン=ハイハット中心で16を刻むもの。これが6小節ごとに入れ替わる。−−どちらのパターンも破壊感あふれていて、ヘッドフォンで聞くと快感だ。

曲展開は単純で、A-A'-A-A'-A'だ。Aが語り、A'がサビ(といっても叫びだが)。どちらもメロディは無いといってよく、トラックのパワーとモノローグの重ね録りだけで展開させる。

#2

16beatによるポップ=ソウル。トニックDでDM7-Em7というコード展開。メジャー7thでとにかく綺麗な音楽を作りたかった。−−これとの対比のため、#1は執拗にリズムの楽曲になった。

基本リズムは、(1)シェーカーとハイハットとバスドラ、(2)クラヴィネットのカッティング(ギター代わり)だけで作られている(ベースは小節の頭で8分鳴るだけ)。このうえで、ボーカル(メインのメロディ)とマリンバ(カウンター)が踊ります。綺麗です。

#3

実は#3は考えていなかったんだが、テープに音を詰め込んでみたら時間が余っていたので、急遽ピアノで適当に作った。実に簡単な3連ポップスで、(前にもいったが)手癖作曲そのものだ。

たいした曲ではないのだが、[生ピアノの簡単なバッキング+ボーカル3本(うち1本はベース)]というスタイルで録音してみたら、思ったより綺麗だった。

outro〜#4

このころはよくモーツァルトを聞いていたので、このintroやoutroみたいなピアノ小メロディは無数に思いついた。このoutroは、第2フレーズのコード展開が非常に綺麗だと思う。

始めは#4のイントロフレーズまでしか作っておらず、それをフェードアウトするつもりだった。ところが弾いてみるとブルージーでカッコいいので、これもさらに展開させて曲にした。だから、outroのあとに曲があるという不測自体に陥っている(涙)。


トキノハナ

1996年5月。

《曲目》 トキノハナ

download:歌詞全mp3

ずいぶん間が開いてしまった。この間にも、いくらかフレーズは造ったのだが、まったく作品コンセプトはできなかった。これも、昔馴染みの「ときのはな」を完成させたに過ぎない。

intro

family to loveに引き続き、ピアノ小曲をintroとして添付した。左手のアルペジオを基調とした簡単な曲だが、コード展開とメロディの半音展開が綺麗だ(と思う)。

トキノハナ

重い重いローテンポ5拍子のプログレ。ドラムはride symbalがそっとリズムを出すだけで、キツイ主張はしない。ベースはストリングスと連動で白玉音場を提示する。コード展開はAm7-A#6−−ということは、23thの[願望と狂気]の焼き直しだ。

楽曲展開は、A-A-B-A-Bスタイル。メロディに変化は少ないが、コーラスの積み重なり方を刻々と変化させていて、それで展開としている。−−Princeの[i would die 4 u]のスタイルだ。

Bメロ(サビ)における8声ハーモニーは、それだけで見もの聞きものだと思う。全体としてのインパクトはちょっと弱いんだが…

−−なお、頭とお尻を、簡単なポップメロディーで挟み込んでいる。あまり意味の無いコラージュになってしまった。


三ヶ月

1996年8月。

唐突に造ったバレエ的作品。完全なデモテープ、鍵盤ハーモニカの重ね録音のみ。結局、知人2名に聞かせただけだ。

完成度は低いが、重要で美しいフレーズやハーモニーにあふれている。今後の作品のエチュードになるだろう。(そんなものを公開するな、という説もある。)


僕は信じない

1997年1月。

《曲目》 #1/#2/#3

download:歌詞mp3 #1+#3

前作をエチュードとした作品。

#1

#1は久々の《いっかくはぢめ節》プリンス系テクノファンク。

スローテンポの3連8分(24)。ドラムのリズムはスカスカで、1と3でride symbalが鳴るだけ。スネアの代わりにQY-10のコンガのLとHを同時に鳴らしたものが入る。この響きが大変トリッピー。ベードラは1では鳴らず、3と3.5でベースとユニゾンで入るだけ。この後の4.5からハンドクラップが0.75ディレイで4度飛んで行く。−−この、小節を超えてフィルが飛んでいく快感は、Princeのお家芸だ。−−ハイハットはクローズで1→2.5→3→4.5と鳴っており、2小節目の3から3連8分でハイハットが入り、3.5でオープンになる。

…なんて書いても全然わからんか。リズム譜を見てください。

R... .... R... .... | R... .... R... ....  ride symbal
x... ..x. x... ..x. | x... ..xx xxX- ....  hi-hat(X is open)
.... .... .... ..H. | .H.. h..h .... ....  hand clap
.... C... .... C... | .... C... .... C...  conga
.... ..b. b... .... | .... .... ..b. ....  bass

左右の演奏には、シンセパッド系のアタックの弱いもので、短いミニマルループが組んである。イントロおよびサビ部では、このパッドにてテーマフレーズを弾く。このテーマは半音上昇スケールによる不思議な感触のもので、さらに和音感をあいまいにしている。

#2

前作[三ヶ月]のメロディーを使ってオシャレ系ファンクを狙ったが、失敗。

#3

ミドルテンポのテクノ系ヒップホップ? 

この曲のバックトラックは、小節の前半でしか音が鳴らない。ドラムは8分でバス−タム−スネア−タムーバスを鳴らして止まってしまう。picking bassも、小節冒頭に2分音符で鳴ってSTOP。クラビネットのブロックコード(カッティング)も、マリンバによる16分分散和音も、すべて小節の前半で鳴り止む。後半は音が鳴らない。−−こういう1小節ループで曲は進む。

この開きスペースで、ボーカルがモノローグを唸る。基本的には単音の低い声で、ときに2声で。

この重苦しいビートが実にカッコイイっす。






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