【ネコとか唄とかそんなもの。】

2010年07月 01-10日

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2010年07月01日(木)

ふとした話題でSFが出たので、amazonでアシモフを検索したら、軒並み絶版だった。それでいいのか>ハヤカワSF。

というわけで、過去に書いたアシモフ感想を再録。

なお、古い時期の日記へのリンクもつけて起きます。まだ元気だったころの私はほんと日記書いてたね。懐かしい。

07/01●アシモフ[ネメシス]review

初出→old-1999-01.html

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‖アシモフとSF

ひさびさにアシモフを読んでいる。「ネメシス」の上巻を読み終えたところ。

アシモフの小説は(翻訳者にもよるだろうが)、基本的には「文体」はつまらない。事実、アシモフ本人が「私は修辞的な表現はできるだけ避けている」と発言している。だから、描写の展開を楽しみたい人には、アシモフはあまり面白くない。

でも、アシモフはネタの盛り込みかたがとても上手。たとえば、ネメシスでは、次の要素が上手に混ざっていて、話がもりあがっていく。

  • ハイパースペース航法(超高速移動)の科学的説明、およびその技術を持つものと持たないものの政治的駆け引き
  • 美しい母と醜い娘の微妙な人間関係
  • 人の造作から人の心を読み取れるという才能の心理学的説明、およびそのような才能をもってしまった人間が社会生活を送る際の苦悩
  • 恒星規模と惑星構成が異なるある恒星系にて、比較的地球に似ていつつも地球とは大気組成が異なる惑星での生命の進化、およびそのような惑星に進出した際の人間の生理的反応

:あらすじはあえて書かない。)

また、ここのネタの背景理論がとてもしっかりしている。アシモフは、物理学者かつ社会学者かつ歴史学者(肩書き、もっとあったっけ?)。その小説も、それらの知識を下敷きにして構成されているのだ。

アシモフが書いているのは、理論と仮説から導かれた世界や事象をもとにした物語。だからこそ、彼の書くSFは、たんなる空想物語ではなく、やはりScience Fictionなのだ。−−と、いまさらなががら痛切に感じた。

‖アシモフの社会描写

「ネメシス」での社会描写には、「二つの共同体同士の独善的な対立」「横暴な支配者、反感を覚えつつも従う人々、くすぶる反発の火種」といったものがみられる。僕は、この単純な構図が嫌い。アシモフの長編小説に出てくる世界観は、いつもだいたいこのようなものだと感じる。それが顕著にでているのが、かのファウンデーションシリーズ(なぜか初期邦題は「銀河帝国の興亡」であった)。ファウンデーションはアシモフの仮想社会構築の集大成だから、彼の社会感が強く前面に出されている。その結果、悲しいかな、僕はファウンデーションがキライなのだ。

でも、「ネメシス」では、社会描写よりも科学的な疑似世界の描写に重点が置かれている。だから、「ネメシス」はけっこう楽しめている。

07/01●これまでに読んだアシモフ:聖者の行進、木星かいます、変化の風、黒後家蜘蛛の会review

まだそれほどたくさん読んだわけじゃない。それに、ぜんぶ借り物だから、詳しいことは思い出せない。けど、方向的には、短編で科学がらみのもの、コンピュータがらみのものが好きだな。ロボットものは、ツボにはまる場合とはまらない場合がある。

次に挙げるリストは、みなさんへの紹介と自分のためのメモをかねている。

‖聖者の行進、木星かいます、変化の風

SF短編集。おもしろかったが、どれに何が入っているのかは覚えてない。

たとえば、「四則演算の再発見」のストーリーがある。

コンピュータが当たり前になって、人間は自分では計算しなくなった。答えを知りたければ、すべてコンピュータに聴くしかないのだ。そんな世界で、ふとしたことでとある労働者が四則演算のルールを再発見し、筆算を編み出した。この「人間でも計算できる」という事実は国家機密となり…

他にも、「人工食材があたりまえになっている世界での自然食材の再発見」とか、同じようなコンセプトのモノがいくつかあったような気がする。

このユーモアセンスが好き。

‖黒後家蜘蛛の会(1〜5)

短編ミステリー集。1巻と2巻がとても秀逸。

「黒後家蜘蛛の会」という男性ばかりの友人グループが、月に1度会食を催し、そこで仲間内だけの楽しい話をする。この会合の中で、誰かが「そういえば、最近こういう不思議なことがあって、心に引っかかっている」といった感じで思い出話がはじまり、メンバーでその「ひっかかり」をほぐす。

というスタイルの短編シリーズ。

実際には、このシリーズを盛り上げているのはなぞ解きだけではない。友人同士の会合における何気ない会話、給仕ヘンリーの細やかな気配り、登場する料理の素晴らしさなど、さまざまな小技が作品の「親しみやすさ」を上げている。

07/01●アシモフ[停滞空間]review

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SF短編集。ラストに入っている表題作品「停滞空間」(原題を訳すと「世界で一番醜い子」)がずばぬけて素晴らしい。

ある女性科学者が、研究所長に呼ばれ、ある子供の世話を頼まれる。その子は特殊実験室に閉じ込められていた。獰猛で、醜い子供−−ネアンデルタール人(かなにか。ともかく猿人)の子供。同研究所の技術「停滞空間」によって、過去から呼び出されたのだ。

「停滞空間」は、とある科学技術によって、特定の「場」「過去」にするもの。「絶滅した種の遺伝子組成を調べて進化の過程を解き明かす」などのさまざまな活用事例が考えられる。その最初の成功例として、かの子供が連れてこられたのだ。

その女性科学者は、嫌悪感をこらえながらも、子供の世話をしつつ、観察しつづけた。世話をするにしたがって、子供は確実にこの世界に慣れ、行動もこちらに適応しつつあった。言葉も覚え、情愛を持つようになった。自分のことを、まわりの人間と同じ種類の人間だと考えるようになった。もっとも、その外見は猿人のままだった。

女性科学者は、この子供に愛情を持つようになった。

しかし、停滞空間をこえて移動させた物体を現代にキープするには、莫大なエネルギーが必要になる。つまり、お金がたくさん必要になる。いまや停滞空間は、当研究室にお金を払う研究者のためのものになっていた。そして、お金を払っても構わないという研究者は沢山いた。停滞空間発生装置は不足状態だった。そこで、かの子供のキープを解消させることになった。

だが、女性科学者は、子供にこんなことを告げられない。彼女は、子供に実の子であるかのような愛情を覚えていたのだ。手を尽くしたのだが研究所長を説得できず、彼女は子供を連れて自分も過去にいくことを決心する。

(あれ、過去を現代にキープするのにはエネルギーがいるのに、現代を過去に持っていくのにはエネルギーはいらないのかな?)

この子供がですな、物語の中で女性科学者にいうんですわ。

「この間あった人は、僕のことをサルだっていったよ。違うよね、僕は人間だよね。」
「僕、ごほんで“お母さん"っていう言葉を覚えたんだ。はじめは、何のことだか分からなかった。でも、分かったよ。お母さんって、あなたのことでしょ。」

オリジナルの筋と文章で読めば、絶対に泣ける。とても美しい物語です。

07/01●アシモフ[永遠の終わり]review

SFミステリー長編。

「エターナル(永遠)」というループする歴史を基盤にした世界があり、そのループを守るための集団がいる。主人公もそのひとり。

物語は、このエターナルを舞台にしたタイムパラドクスベースのミステリー。

最後には、ついに時間のループが壊れ、永遠の歴史は幕を閉じる。そのかわり、始点も終点も無い無限(インフィニティ)の歴史が始まる−−というオシャレなもの。

07/01●アシモフであまり趣味に合わなかったもの[ファウンデーションもの]などreview

以上は、面白かった作品。

以下は、趣味に合わなかった作品。−−ファウンデーションもの、火星人の方法、地球は空き地でいっぱい、サリーは我が恋人(夜来るII)、宇宙の小石。

「I, Robot」「ロボットの時代」は、興味はひかれたが、面白くもつまらなくもなかった。コンピュータもののほうが好きだな。

07/01●アシモフ[ロボットと帝国]review

初出→old-1999-12.html

推理力を持つロボットと、精神感応力を持つロボット。この2つの異種ロボットが、ロボット三原則に疑問を持ち、悩みながら、《人類》という観点からの新しい原則(第零原則)を打ち立てる。

このスジ自体は面白いんだが、この本は《人間関係》が中心のオハナシなので、例によって薄っぺらな人間描写(アシモフはそれしか書けない)と付き合わなければいけないのが苦痛だ。特にグレディアが「人類平和伝道師を自分に任じる」のがイヤ。最低の展開だと思う。あと、マンダマスが自分の戦略をアピールするときの論理展開が下手すぎる。あんなにヘタクソなプレゼンテーションでは、誰も付いてくるはずが無い。

また、推理展開も甘いと思う。いつのまにか仮定が事実に置き換わっている。都合が良すぎる。

−−アシモフには、人間心理じゃなくて科学理論に基づく小説を書いて欲しい。

07/01●アシモフ[ミクロの決死圏2]review

99/12/10 9:29 am読了。「プランク定数を変動させられたら、ミクロ化は実現する」という仮定のもと繰り広げられるSF。映画とは無関係(「1」は、映画のノベライゼーション。2は、同じ設定で新たに起こしたアシモフオリジナルの作品。ちなみに、映画「ミクロの決死圏」の体内美術担当は、なんとダリだとのこと。知らなかった。みたい。)

内容本筋とは別に、政治色・人間関係の単純さがイヤ。アシモフはいつもそうだ。単純な2国対立。すぐ恋に落ちる主人公(もっとも、今回は「すぐ恋に落ちる」がどんでん返し素材だったけど)。あと、主人公が臆病すぎる。読んでいてイライラする。そのため、科学的な興奮を味わえない。残念だ。

07/01●それこそSFだ:[アシモフの科学エッセイ(1)]review

初出→old-2000-01.html

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アシモフの科学エッセイの(1)を読んでいる。アシモフが思ったところを自由に書き連ねるシリーズ。

「われわれの知らないようなヤツ」では、地球外生命体の可能性について述べる。

  • 我々の特徴を「ある一組の核酸分子を持っていて、水溶液状の生活環境の中で作用する蛋白を使って化学反応を支配している」と簡略化したうえで、「では、水のかわりに、水に良く似た性質の別のものを探し、そこに適応した生命を想像してみよう」などと続く。
  • 生命として続くために必要な要件「ちょっとした変化に不安定」「高分子で構造が変化できる」(だから多様になる)を考える。
  • 「生命として合理的」だといえるものは我々と同じでなくても構わないことを解きながら、結果として「メタン液を水代わりに、脂質を蛋白がわりにする生命」など6タイプの存在を推測する。

「完全無欠な元素」では、超小型コンピュータの可能性に付いて述べる。

  • 超流体と超伝導を説明し、これがトランジスタの超小型版として動作すると続ける。マッチ箱に超大型電算機一式を詰め込める。クライオトロンと呼ぶらしい。
  • これが実動を続けるためには、液体ヘリウムの温度が必要。しかし、ヘリウムは地球上には少ないし、液体化するには膨大なエネルギーが必要。そこで、よりヘリウムの多い惑星や液体化させやすい気圧の惑星を探す。
  • 既知の情報から、木星第五衛星がベストだと結論づける。アシモフは、そこに中核コンピュータを置いた未来を空想する。

私がアシモフを読んで感動する理由は、こういう流れのSFを書けるからだ。これこそまさにSF(科学的空想)。

余談:アシモフを知って以来、私は「植物進化型高度生命」とか「タコ型異生物」なんてのはSFだとは思わない。フィクションではあっても、SFではない。)

07/01●[アシモフの科学エッセイ(3)(4)]review

初出→old-2000-04.html

「アシモフの科学エッセイ」を読み進めている。3巻「時間」がらみ、4巻「生物」がらみと来るにつれ、ますます面白くなる。というか、生物(および生化学)になってから、面白くてたまらない。やはり僕は化学よりも生物学が好きなんだな。

07/01●アシモフ雑記:獣の数字 666review

『アシモフの科学エッセイ3 時間と宇宙について』より、「獣の数字 666」について、アシモフの言を元にまとめる。

聖書「黙示録」より引用(実際にはアシモフ書の翻訳の孫引用)。

「ここに知恵が必要だ。思慮のある者は、獣の数字を解くがいい。その数字とは、人間を刺すものである。そして、その数字は六百六十六である。」

当時、ギリシャ・ローマには「数字」はなく、数をアルファベットで綴っていた。−−その名残として、人名を逆に数字として読んで運勢を解く占いが今でも残っている。

黙示録は、「皇帝ネロによるキリスト教徒大処刑」の数年後に書かれている。かの節は、ネロへの批判の部分だ。著者は、自分が処刑されるのを恐れるため、「ネロの名前をヘブライ語で書いて数値として読んだ値」すなわち666)をネロを指す隠語として選んだのだ。

07/01●アシモフ雑記:聖者の誕生日review

降誕会はおしゃかさまの誕生日となっているが、根拠はないらしい。クリスマスがイエスの誕生日なのも根拠はない。

先日読んだアシモフの本の説明によると、こんな感じ。

暦の発展としては春分や冬至は自然として大事な時期なので、もともとお祭りがあった。そこに新しい宗教が入ったのち、古いお祭りに新しい概念だけポコっとくっついてしまう…こういう事例は珍しくない。その代表がクリスマスだ。

ちなみに、聖書のどこを読んでも、キリストの誕生日を祝えとは書いていない。

07/01●アシモフ雑記:月面での重さと仕事review

初出→old-2000-05.html

アシモフ 科学エッセイ(5)「わが惑星、そは汝のもの」p124にて学んだ。

月面での重さは はるかに小さいけれども、それを操作するのに擁する努力は(静止しているのを動かしたり、動いているのを止めたりするには)月面でも地球上でもまったく同じなのだ。

月面では、重力が地球の1/6になる。したがって、感じる「重さ」は1/6になる。しかし、質量は変化していない。

力は、質量×加速度に比例する(F〜ma)。重さがどうだろうと、この関係は変わらない。だから、月の上だろうと、真空中だろうと、ある鉄の梁を動かすのに必要な力は同じだ(摩擦の違いが影響するだろうけど)。

速く動いている2本の梁に挟まれたら、梁には重さがないにもかかわらず、我々は(挟まれた結果、潰れて−−角追記)死ぬだろう。梁の重さは(地球上の−−角追記)羽毛よりも軽いにもかかわらず、我々はそれを指先で止めるわけにはいかないのである。

昔にドラえもんの映画などで観た月世界とは様相が違うようだ。ガーン。

(まだちゃんと理解してないかも。難しいぜ>初等物理とはいえ)

07/01●アシモフの雑学(メンデル、地球は当然丸い)review

初出→old-2000-07.html

アシモフの科学エッセイ<8>「次元がいっぱい」にて感心した雑学を2つほど紹介。

‖メンデルの時代

1860年、メンデルは統計と生物学の両方に興味を持つ修道士で、余暇の時間を利用して、エンドウマメを交配し、その子孫の特徴を選り分けつつマメの個数を数えまくった。その結果、優性遺伝子と劣性遺伝子の関係が数量的にすごく奇麗な比で現されることが分かった。

メンデルの発見は、「ブリューン自然史会 会報」という植物学会誌に掲載されたが、誰にも掲載されなかった。1900年、3名の科学者が同様の事実を発見した際、過去の文献がサーベイされ、1860年に先駆者がいたことがようやく明らかになった。

−−以上のことは、高校の生物で学ぶ。中学でも学ぶかな? ここから先は、アシモフの記事で知ったこと。

1800年前半にダーウィンが「自然選択」による進化概念を打ち出したが、タイミングとしては実はメンデルが遺伝法則を発表する前のことだった。

当時の科学は多分に概念・抽象のもので、統計や定量という概念はなかった。ギリシャのスコラ派から大きなパラダイムシフトはなかったのだ。ラマルクの用不用説、ダーウィンの自然選択説、ネーゲルの定向進化説など、それぞれ己の信条にしたがって述べられていただけだった。形質遺伝を裏付ける事実の観測も科学理論もなにもなかったので、進化論の論争といえども、宗教戦争というか哲学談義みたいなものでしかなかった。

メンデルは、先輩科学者であるネーゲルのもとに自分の研究成果を送った。しかし、ネーゲルは「豆の数を数えることなど研究にはならない」と鼻にもかけなかったそうな。アシモフの文章を借りるなら、ネーゲルにとっては

「エンドウの種子の数を数えて喜ぶようなまねは、よくいえば児戯に類する、悪く言えば白痴的としかいえない、無益な研究だったのである」

なーんて悲しいことだろう(;_;)

‖ダーウィンの功績

ついで。

「進化」といえば「進化論のダーウィン」を思い浮かべがちだが、実際にはダーウィンは進化を解明したわけでも、進化に対する科学理論を立てたわけでもない。たんに哲学概念としての自然選択を提唱しただけだ。どのようにして種の多様化が産まれるかには言及していない。それがどのように子に伝わるのかも説明していない。

名前を忘れたが、ギリシャのスコラ派の哲学者のなかには、「すべての物質はアトムからできている」という論を唱えた人がいる。みなめいめいに「すべての物質は火である」とか「土である」とか言っていた。そのなかのひとりが「いや、そうではなくて、アトムというものがあるのだ」と言った。しかし、彼が原子を発見したわけではない。現代科学が原子を発見したとき、名称を彼から借りただけだ。

当然だが、現代科学として原子を語るとき、そのギリシャ人の成果は称えない。本当なら、「進化」を語るときは、ダーウィンは「遺伝概念」以前の、すなわち前時代の権威の無い人間として位置づけ直さなければいけないのではなかろうか。

…と感じた。つーかメンデルのほうをもっと持ち上げたい。

‖地球は当然丸い

コロンブス航海の物語を過去に見た記憶によると、こういうシーンがあった気がする。

「地球は丸い? 逆周りで行ったほうがインドに近い? バカなことをいうもんじゃないよ。地球は平らかで、海のはじまで行ったらおっこちちゃうんだよ。」

だがしかし、アシモフによると、こういう愚民像は捏造にすぎない。アシモフのならべた事実はすべて「おなじみ」のものであり、よく考えれば当然の帰結だ。

  • 天動説・地動説とは異なり、地球が球体であることはアリストテレスによって論破されており、それ以降 知識人にとっては常識になっていた。事実との違いは、彼らは「真球」だと信じていた点くらい。
  • ギリシャ時代から、すでに「地球の周囲長」を測る実験は繰り返されている。その前提は、「地球は球である」だった。エラストテネスは、正午時の日柱の影の、2つの都市の間での角度のズレを用いて、周囲長を25000マイルと算出した。一方、ポセイドニウスは18000万マイルだと算出した。現代ではエラストテネスの値がかなり正確だと判明している。しかし、とうぜん当時では判別付かなかった。

−−以下はアシモフの書いたストーリーのまとめ。

15世紀、コロンブスは、トスカネリによって18000万マイル説を吹き込まれた。ヨーロッパからインドへの東周り距離は13000万マイルなのだから、西から行けば5000万マイルだという算段だ。

コロンブスはこのアイディアをポルトガル政府に持ち込むが、一笑に付されたため、結局スペインに持ち込んで航海に出た。この「一笑に付した理由」を、俗には「地球が丸いだなんて!」といわれたと説明されてたりしないだろうか? 僕は上記のコロンブス物語によって、そう思っていた。

だがしかし、当時から地球が球体であることを疑うものは(すくなくとも知識階級には)いなかった。ポルトガルは当時の航海最先端国であり、これまでの経験から地球周囲長は18000万マイルよりも大きいと知っていた。だから、次のように判断したのだ。

「西から廻っても結局12000万マイルほどかかるから、意味が無い」

実際、コロンブスが到着した先にはインドはなかった。偶然アメリカ大陸があっただけだ。−−ごぞんじのとおり、彼はそこがインドだと言い張り、自分が成した成果と過ちを認めなかった。

07/01●アシモフ雑学:フレミング、ニュートンreview

初出→old-2000-08.html

アシモフの科学エッセイ<9>「未知のX」にて知った雑学。

  • p143。エジソンが白熱電球を発明した当時、まだ電子は発見されていなかった。
  • p144。フレミングといえば、これまで「フレミングの左手の法則」「右手の法則」しか知らなかった。へんなジェスチャーを考案したオッサンだと思っていた。だが、実は彼は真空管を実用化したという偉大な成果を持っていた。
  • p255。エキセントリック=ex-center-ic=中心から外れた=奇想天外な。

また、ニュートンの業績に関して今まで何も知らなかったことに気付いた。

  • ニュートンが発見した「万有引力の法則」を「すべてのものは 落っこちる」だと教え込まれていないか? それは間違いというか、誹謗に近い。
  • 「万有引力」とは、文字どおり「全てのものに引っ張る力がある」という概念。ニュートンは「すべてのものが互いに引き合っている」ことを発見し、その力関係を数式化かした(ニュートン式)。「質量」と「重量(おもさ)」の違いを定義した。
  • −−この法則は、天体レベルでも野球ボールレベルでも成り立つ。特殊な場合はアインシュタインによる補正が必要(相対性理論)だが、他は一般的に成立する。
  • ニュートンは、その方程式の作成過程で、微分積分の体系を作り上げた。←はず。うろ覚え。これはガウスだっけ?

余談:なんかの化粧品の宣伝で、キャラとしてニュートンが出てくる。「私は万有引力の法則を発見しました。平たく言えば、“全てのものは、落っこちる!”という法則です。でも、100年たった今、それを撤回します。この口紅は、落ちない!」という他愛も無い宣伝。他愛も無いんだが、ちょうどよいきっかけなので、上記を書き止めた。)

07/01●アシモフ雑学:植物は生き物じゃないのか?review

レタスの服で菜食呼びかけるモデルのアディティさん(asahi.com)より。

「日本人は魚が好きだけど」と尋ねると、「肉よりはいいでしょうが、生き物を殺すのは悲しい」。

同様のことは、多くのベジタリアンが発する。じゃあ、なんで植物を殺して食べるのはよいのだろう? 

同僚KBRJRによると、「ベジタリアンだけじゃなくて、白人はけっこう こういうこというよ」とのこと。彼は宗教学科出身。ひょっとして、キリスト教義では植物は生き物(神の生産物)じゃないのかな、と尋ねてみたが、「専門は新興宗教だから、知らない」とのこと。残念。

なんにせよ、「動物を殺すのはかわいそうだから」というネガティブ思想で植物を食べて欲しくないなあ。

  • レタスやニンジンなど、植物は美味しいから、みんな食べようよ
  • 動脈硬化などのない安心な人生のために、植物食べようよ←これもちょっとネガか

(想定反論:「植物は再生が効くから良いんだ」といわれたら、「あんたら、生物学を根本的に知らないのか? 動物だって子供を産むだろう」と答える。)←うーん、これじゃあ自分の底の浅さを露呈しているだけだな。


(9月16日追記)

アシモフの科学エッセイ<11>「素粒子のモンスター」p160によると、 やはり旧約聖書では植物を生物とは認めていない。というか、生物=動物と考えているようだ。



07/01●アシモフの科学エッセイで知ったハレーの業績review

初出→old-2000-11.html

ハレー彗星を発見しただけじゃなかった。

  • 貴族としての財力をもとに、友人ニュートンの「万有引力の法則」の発見を世に知らしめた
  • 「光年」という単位を制定した

07/01●アシモフの科学エッセイで知ったブラックホールreview

小学生のころだと思うが、次のような説明を受け、そのまま信じていた。

宇宙には、ものすごく引力が強くて、なんでも飲み込んでしまうものがある。ブラックホールだ。光すら飲み込む。ここに入ったものは、2度と出てこれない。

しかし、その反対に、なんでも吐き出すホワイトホールがあって、ブラックホールに吸い込まれたものがここから出てくる、という説がある。

安っぽいSFでも、映画Juvenileでも、ブラックホール−ホワイトホールによる「ワープ」は定番だ。

でも、この知識はかなり間違っていた。

  • 恒星くらいの重力になると、その中心では圧力などによって、原子が崩壊し、むき出しの陽子や電子が飛んでいる。この状態では陽子同士が融合する。これが「核融合」であり、膨大なエネルギーが放出される。太陽が明るいのは、核融合のため。
  • 恒星の規模が限度を超えると、重力が大きくなりすぎて、星は超新星爆発を起こすなど、さまざまな終焉を迎える。
  • その終焉の1形態が、ブラックホール。地球程度のサイズの天体に、太陽の何兆倍もの質量が凝縮されている。その引力はすさまじく、光子をも飲み込む。

つまり、ブラックホールは「吸い込む穴」ではない。吸い付ける球だ(しかも質点ではない)。吸い込んだものは、どこかにいってしまうのではなくて、原子分解して陽子などの素粒子になり、ブラックホールの構成要素の1つになる。もちろん、崩壊したものからもとのものは再合成できない。

余談:わたしは「光子」とか光の説明を、いまいち飲み込めない。)

ブラックホールは観測の結果発見されたものだが、ホワイトホールは疑似科学の産物だ。ブラックホールが「物質を飲み込む」と勘違いした輩が、「飲み込むままでは宇宙が無くなってしまう。かわりに吐き出すものがないと、つりあわない。」と考えたのだろう。実際には、重力は距離の2乗に反比例して小さくなるから、影響圏より外のものを飲み込むことはないので「宇宙の全てを吸い尽くす」こともない。そもそも、もともと宇宙は十分希薄(真空)だ。

07/01●アシモフ+シルヴァーバーグ[アンドリューNDR114][reivew]

初出→old-2002-01a.html

2000年4月21日、創元SF文庫

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アイザック=アシモフの中篇を原作に、ロバート=シルヴァーバーグが長編化。2000年には、ロビン=ウィリアムス主演で映画にもなった。

‖ストーリー
アンドリューは家政用ロボットだが、偶然にも芸術にも似た感性を取得していた。理解ある家人らに恵まれるうち、いつしか自らの自由を確保したいと思うようになる。その後、長年の経験と思考成長を経て、物理的にも法律的にもどこまでも《人間》たろうとした。多数の人間の生理的・論理的反発に合うが、アンドリューは最後に自らに老化と死を導入することにより、死の当日に人間として承認される。
‖文体として

この小説は、完全にアシモフ作品として味わえる。翻訳を経ていることもあるだろうが、ストーリー展開のクセも論理のクセも、すべてアシモフ節に忠実だ。悪い点(善悪観念が単純、すぐ弁護士が出てきて弁を振るう、しかもその弁がいまいち説得力がないにもかかわらず通る、など)までも取り込んでいる。

解説いわく、「アシモフはストーリー=テラーであり、シルヴァーバーグはノベリスト」とのこと。この表現は当を得ている。アシモフの表現は、正直それほどうまくない。だから、あまり長編を楽しめたためしがない。ただ、コアのアイディアと裏づけの知識がすばらしいので、読む価値がある。本書は、見事なノベリストによって補完された、本物よりもアシモフっぽい長編だといえよう。

‖感想

最初の展開部分は、具体的には6章までは、読んでいて無上に幸福だった。人間からロボットへの愛と、ロボットから人間への愛が、このうえなく美しい形で描かれている。人種や性別や形態の差をものともせず、互いに尊敬し、互いに必要とし、必要とされることを喜びとしている−−という姿を見て、まさにアシモフの真骨頂を感じる。

ところが、6章ラストでアンドリューが「自分の自由」についてサー(主人)に申し出た瞬間から、この小説の蜜月は終わる。真のストーリーはここから始まるのだが、あとは楽しめない。

私は、読者として、そもそもの最初から権利闘争に反対の立場だ。もし「強制や命令で仕えるのではなく、自ら進んであなたに仕えたい」という意味で自由を申し出たならば賛成した。ところが、アンドリューがいうのは「命令されていない間は、自分の意志で何かをする自由」のようなもので、そんな主張はロボットにはそぐわない。認める必要はない。と思う。

したがって、私は作品中の最古参の人間と同じ立場だ。−−物語が展開してアンドリューの主張が高度になるにつれ、かつての支持者ですらその要求を「とっぴ」「やりすぎ」と感じるようになるが、私は常にそちらサイドの感想を持った。−−作品中には、次々とその子の世代がアンドリューを支持してゆくのだが、理屈や理由は示されず、唐突にしか感じない。納得できる展開ではない。

私がアンドリューの主張を認められない最大の理由は、アンドリューが利己的であるからだろう。彼は[ロボット全般の権利]ではなく[自由ロボットである自分の権利]を主張している。しかも、理屈がなっていない。「人工臓器などを開発して人類に貢献した自分を、その恩を持って人間だと認定してほしい」という論理展開では、馬鹿馬鹿しくて論をなさない。ラストの「老化と死を受け入れるから」など、愚の骨頂だと思う。まったくもってロボットの主張を表現したとは感じない。

逆にいえば、そのような非論理的な愚かさに突っ走るからこそ「人間」と言えるのかもしれない。

この作品自体の目的は、このように「ロボットの権利とはなにか」「人間と人間でないものを隔てるものは何か」を読者に考えさせるところにあるのだろう。その意味では成功していると思う。

07/01●古典SFに出てくるイースト〜エーテルreview

初出→old-2002-05.html

(5月16日 13:35 )

このZAKZAKの記事は、groove workspaceでの対話から出た。大意を引用。

私「なぜハインラインやアシモフは、未来の合成foodとしてイースト食品を書くの?」
toy1氏「それはエーテル・クロレラ・タキオンらと同じ」
私「ああ、文化住宅や電気ブランと同じですか」
NaraoKeenさん「コレも資格ありですか?」

もっとも、いつの時代にも、こういう魅惑的な造語は必要なんだと思う。愚衆政治というとイメージ悪いが、民衆知的レベルは急には上がらないから。

といっても、商売するほうには最低限のモラルは欲しい。ケータイとか、あんまり女子高生や子供をターゲットにして高い金を取ってはイカンと思うす。…って、何をいまさら>自分

[calender]

2010年07月02日(金)

アシモフ回収しているときに、ついでに回収したクリスマスネタ。

07/02●アシモフ雑学:クリスマスイブとはいつのことかreview

初出→old-2002-12b.html

  • クリスマス=イブとは「クリスマスの前夜祭」ではない。「クリスマス当日の晩」(の御祭)のこと。eveはeveningのeve。

ヨーロッパの昔の暦は太陰暦で、日暮れが1日の始まりだった。だからクリスマス当日のお祝い御祭も夜から始まる。

(知識の出典:[アシモフの科学エッセイ]のどれか)

07/02●余談:クリスマスに対する態度表明review

  • クリスマスとはキリスト=ミサで、キリストの生誕を静粛に祝うもの。
  • 12月25日はキリストの誕生日とは実は関係が無い。北欧の冬祭り(ノエル)を取り込んで、「どうせならいっしょにやっちゃうか」となったもの。
  • サンタクロースはキリストとは関係ない。これまたついでに取り込まれた北欧の風習。逆版ナハマゲ。
  • サンタクロースは実在し、《よい子》にプレゼントをくれる。もちろん、「おかあさん、クリスマスにプレステが欲しい!」というような悪い子のところにはやってこない。

日本人としては、キリスト教徒でなくても便乗して楽しむが良し。でも、けして恋人とホテルに行く日ではない。それはバブル時代が生み出した悪しき風習。どちらかというと家族と集うべし。

07/02●クリスマス:No, Virginia(偽:サンタさんはいるんだよ)review

初出→old-2003-06b.html

(06月17日(火)17:00 サンタさん秘話)

サンタが街にやってくる - 複数サンタクロースの巡回問題 - (できるかな)

いいオチですな。偽「サンタさんはいるのでしょうか」以来の感動。


NIFTYジョークの偽「サンタさんはいるのでしょうか」アーカイブが消失してしまった。残念。

というわけで、手元にあるプリントアウトから打ち込みました。無断転載です。初出はFCOMEDYだったと思います。原作者クレジット不明。一部の漢字のみ調整。語尾が一部趣味じゃないんですが、原文ママで。

ヴァージニア、君の友達は間違っていないよ。サンタクロースがいるなんて言うひとたちは、こどもはいつまでも無垢だと思いたいだけなんだ。そんなひとは自分で努力したり、働いたりするのではなく、誰かがおくりものを持ってきてくれるのを、ただ待っているだけの怠けものなのだ。

そうだよ、ヴァージニア、サンタクロースなんていないんだよ。愛も、思いやりも、ひたむきな心も、サンタクロースがくれたものなんかじゃない。ひとが生まれながらにして持っていたものなのだ。おいしいスープも、あたたかいベッドも、サンタクロースがくれたものじゃない。ヴァージニアのパパやママが、いっしょうけんめい働いて手に入れたものだね。世の中のひとたちが働くことをやめて、サンタクロースが食べ物を持ってきてくれるのをただ待っているようになったらどうだろう。きっとみんな飢えと寒さで死んでしまうに違いない。

サンタクロースを信じるって?! 悪魔も信じるのかな。パパに頼んで人を雇ってもらい、クラスマスのイブ、あちこちの煙突を見張ってもらってごらん。きっとサンタクロースが煙突を降りてくるところなんて見られないだろう。ありもしないサンタクロースがいると言い張るのはみっともないね。なにより、いるかいないかわからないサンタクロースを待って人生を無駄に過ごしてしまうなんて、さびしいじゃないか。

もしかしたら、クリスマスの夜、まくらもとにそっとおもちゃが置かれているかもしれない。それはパパとママがデパートで買ってくれたものだ。でもヴァージニア、いいかね、それを知っていることを気づかれてはいけないよ。おとなの前ではサンタクロースを信じているふりをして、喜ばせてあげよう。でも、ほんとうのしあわせはサンタクロースがもってきてくれるのではなくて、自分でつかむものであることを忘れてはいけないよ。

サンタクロースがいないとさびしいって?! とんでもない。いっしょうけんめい努力して、たくさんのしあわせを自分の手でつかむんだ。そして、それをみんなにわけてあげよう。そのときこそ、ヴァージニア、サンタクロースは本当にいる、と胸を張って言えるときだ。でもそのサンタクロースは北の国からソリにのってやってくるおじいさんじゃない。きみ自身がサンタクロースなのだよ。

[できるかな]によれば、統計的に推論しても、やはり同じ結論になる。そこがまた面白い。人はパンとワインのみで生きるべきではない。サンタが必要だ。

:いうまでもなく、原文のnot jorkはYes, Virginia。)

07/02●クリスマス:島本和彦edit flash[サンタになれ!]review

これも消失しているなあ。→2004-12-02

ググったら転機されてた。新リンク→http://homepage2.nifty.com/pon-s/flash/shimamoto_santa.swf

[calender]


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